ところが、青少年をおもなターゲットにしながらも年齢制限を設けなかった。その理由について明確に説明された資料が存在するのかどうかは不明だが、事情はともかく「18きっぷ」が人気のロングセラーとして定着していったのはご存知のとおり。“乗りテツ派”の鉄道旅はもちろん、家族旅行やシニアの女性グループの旅行、ビジネスなど幅広い場面で愛用されているのである。

 しかし、いまでこそ年齢に関係なく使えることが広く知られるようになった「18きっぷ」だが、年齢制限があるとの先入観を抱いている人は、少なからずいたようだし、いまでもWEBを検索してみればその点に触れた記事を容易に見つけることができる。当時、私の仲間うちでも旅に打ち合わせのときに「(自分たちにも)本当に使えるの?」と話題になったもので、あのネーミングが利用を躊躇させていたという皮肉な見方もできるかもしれない。

 コロナ禍の出口が見えないなか、その動向を心配していた人も少なくないのではないかと思うが、今夏も発売されているのは先述のとおり。一方で小さな変化が話題になっている。券面に「使用開始後の払い戻し不可」の文字が追加されたのである。「18きっぷ」は使用開始後の払い戻しはできないきまりで、切符と一緒に発行される「案内」にもその旨が記されている。そこに払い戻し条件を券面に加えたのは、コロナ禍の影響を慮っての措置だと考えられる。先の「緊急事態宣言」をめぐり、定期券を含む乗車券類の払い戻し措置(特例的な扱いを含む)が取られたのは記憶に新しいが、今夏の「18きっぷ」では特例的な扱いをしない旨を示すことにしたのであろう。

 ともあれ、今夏も活躍しそうな「18きっぷ」。「コロナ禍」という未曾有の事態のなか、この切符を生かしてより安全で充実した旅をいかに実現するか。「18きっぷ」ファンにとっても新たな試みが迫られているともいえそうだ。(文・植村 誠)

植村 誠(うえむら・まこと)/国内外を問わず、鉄道をはじめのりものを楽しむ旅をテーマに取材・執筆中。近年は東南アジアを重点的に散策している。主な著書に『ワンテーマ指さし会話韓国×鉄道』(情報センター出版局)、『ボートで東京湾を遊びつくす!』(情報センター出版局・共著)、『絶対この季節に乗りたい鉄道の旅』(東京書籍・共著)など。