主治医がどの方法を得意としているのか、費用などとともに説明を受けた上で決めるとよいでしょう。

■歯周組織再生療法を受けた歯の将来は?

 歯周組織再生療法で歯槽骨が増え、歯が安定すれば、将来にわたって歯は抜けにくくなるはずです。治療成果の研究は、まだ十分におこなわれていませんが、リグロスについては開発者である大阪大学大学院の村上伸也教授らが興味深い研究報告をしています。歯周炎でフラップ手術後にリグロスによる治療をしたグループと、プラセボ群(フラップ手術の後、偽薬を使用)で治療をしたグループとで追跡調査をおこない、歯周病の再発率を比較したのです。追跡できた期間は最短8年~最長10年でした。その結果、プラセボ群では再発率が38・2%だったのに対して、リグロス群では0%と差が出たということです。

 歯根膜や歯槽骨にはさまざまな細胞に分化する能力を持つ「幹細胞」が存在しています。これを取り出し、培養したものを歯周組織に移植して組織の再生をおこなう「細胞移植治療」の研究が国内外で始まっています。さらに研究が進めば、現時点では適応にならない重症の歯周病の患者さんも再生療法を受けられる可能性があります。

※『続・日本人はこうして歯を失っていく』より

≪著者紹介≫
日本歯周病学会
1958年設立の学術団体。会員総数は11,739名(2020年3月)。会員は大学の歯周病学関連の臨床・基礎講座および開業医、歯科衛生士が主である。厚労省の承認した専門医・認定医、認定歯科衛生士制度を設け、2004年度からはNPO法人として、より公益性の高い活動をめざしている。

日本臨床歯周病学会
1983年に「臨床歯周病談話会」としての発足。現在は、著名な歯周治療の臨床医をはじめ、大半の会員が臨床歯科医師、歯科衛生士からなるユニークな存在の学会。4,772名(2020年3月)の会員を擁し、学術研修会の開催や学会誌の発行、市民フォーラムの開催などの活動をおこない、アジアの臨床歯周病学をリードする。