東京理科大学での「データサイエンス教育プログラム[基礎]」の「コンピュータ数学基礎2 及び演習」講義風景(写真提供/東京理科大学)
東京理科大学での「データサイエンス教育プログラム[基礎]」の「コンピュータ数学基礎2 及び演習」講義風景(写真提供/東京理科大学)

 政府は「AI人材」育成のための取り組みの一つとして「AI×専門分野」のダブルメジャー(二重専攻)を掲げている。大学院や大学でも、専門分野と合わせてAIについて学べる場を提供する動きが広がり始めている。AERAムック「大学院・通信制大学2021」では、立教大学、東京理科大学の取り組みを取材、その一部を抜粋して紹介する。

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 AI(人工知能)はスマホの音声認識や画像認識に使われるなど、生活の中にも浸透してきた。政府は2019年6月にまとめた「AI戦略」で、25年までに大学生と高等専門学校の年間約50万人の卒業生全員が「数理・データサイエンス・AI」の基礎教育を受け、25万人がAIを応用できる能力を習得するという目標を掲げた。専門分野とのダブルメジャーでデータサイエンスやAIを学ぶのもその一環だ。

 立教大学は20年4月、大学院「人工知能科学研究科」を新設した。研究科委員長の内山泰伸教授は「AIやデータサイエンスは学際性が高い。さまざまな分野でAIに通じた人材を育てるという『AI戦略』は、この大学院の構想と重なります」と話す。

「AIによる人間の知能の拡張は、文明史上の革命だと私は考えます。多くの人がこの革命の担い手になるべきですが、専門知識とAIの技術を両方とも備えた人材がいないと社会での活用が進みません。大学院にしたのは、専門領域を持つ人へのAI教育が主な目的だからです。AIエンジニアが法律や会計を学ぶよりは、もともとそれに詳しい人がAIを学ぶほうがハードルが低いはずです」

 人工知能科学研究科の第一期生75人のうち約4分の3は立教大学以外の出身者で、学部での専攻は文系と理系がほぼ半々だ。社会人入学が50人と3分の2を占め、職種はITエンジニア、コンサルタント、会計士、サービス業、マスコミ、公務員、教員とさまざまだ。

 カリキュラムは、日本の一般的な大学院とはかなり違う。大学院生は研究室で過ごす時間が長いのが普通だが、この研究科は講義が多く、大学院にはあまりない必修科目もある。一方では修士論文や研究報告書をまとめるので、大学院生としての研究もおろそかにできない。内山教授は学習と研究が両立するようバランスを取って科目を配置したという。学部と大学院が融合したようなものといえる。

 4月からの授業は新型コロナの影響でリモート方式でのスタートとなり、学生同士や教員とは在宅で使えるコミュニケーションツールでも連絡を取り合っている。平日夜に1コマ100分の講義が毎日あり、土曜の3コマと合わせてすべて履修すると週8コマになる。修了に必要な30単位は週に3日授業を取れば間に合うが、多くの社会人が週に7、8コマ履修するという。

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