「学部からそのまま来た院生は、平日昼の空き時間に復習や研究をする時間が取れますが、仕事を持ちながらだと2年間、勉強だけでも大変です。しかも目一杯授業を受ける熱心さは、こちらの想像以上です。22年度に開始する予定の博士課程にも、75人中21人が進学を希望しています」

 内山教授は自身の専門研究分野の宇宙物理学で、宇宙線の観測で得られるビッグデータを分析するのにAIやディープラーニングの技術を活用してきた。その経験からAIの必要性を痛感し、3年前にこの研究科を提案した。

「構想に賛同してくれる人もいましたが、大学は長期的に価値のあることをやるべきで、AIといっても一過性のブームではないかという声も結構ありました。今では学内の理解が進み、学部でのダブルメジャーについても議論が始まっています。学部の場合、専門知識がない高校生が入って来るのでAIとそれ以外の分野を同時に学ぶのはかなりの負担になりますが、私たちもこの大学院で経験を積むことで、ダブルメジャーが実現できる道が見えてくるはずです」

 東京理科大学は19年4月から、全学部生を対象に「データサイエンス教育プログラム[基礎]」を実施している。データサイエンスの基礎知識やリテラシーを習得するのが目的で、「数学」「統計学」「情報学」「データサイエンス」「その他(学科特有のデータ)」の5分野で各4単位以上、合計で20単位以上を取得すると学長から認証書が授与される。

 矢部博データサイエンスセンター長は「データサイエンスの知識や利用能力は、理科大生にとって不可欠です」と説明する。

「ビッグデータが飛び交い、それを活用して仮想空間を生み出し、AIで処理して実生活に生かすという今までになかった時代が来ています。それらのデータのやりとりを管理できる能力を持った人材が社会の各分野で強く求められています。理科大は理工系の総合大学で、もともと全学部学科でデータを扱った教育をしており、データサイエンス関連の科目は7学部31学科に分散していましたが、それらを横断的に学べるようにしました」

 若山正人副学長は「データサイエンスのベースになるのは数学や統計学。理科大はそれを専門とする教員が多く、ことに統計学の教員数は日本の大学ではほかに類を見ません」と話す。

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