一塁に走りながらこれを見届けた川端は、右手でガッツポーズ。三塁ランナーの上田剛史がホームを踏むのを待たず、ナインがフライング気味にヒーローのもとに駆け出すのを見ながら、筆者は今から10カ月前の試合を思い出していた。

 あの日、昨年9月26日は1対1の同点で迎えた9回裏、2死一塁で川端が打席に入っていた。一塁ランナーが盗塁を決めてカウント1-1となったところで、3球目をレフト前に運ぶと、この時もサヨナラの走者だった上田が二塁から転がり込むようにしてホームイン。サヨナラ勝ちの舞台は神宮ではなく、二軍の本拠地である埼玉・戸田球場、イースタンリーグ最終戦のロッテ戦だった。観衆は公式発表で422人。三塁側の土手で見ていたファンからも拍手が起こる中、ナインの控えめな祝福に笑顔で応えたのが、川端にとって2019年シーズンのフィナーレとなった。

「今年、神宮球場で一度もサードのポジションに就くことができなかったので、なんとか守備に就きたいですね。守りに就きたいです。(ファーストより)サードの方がいいですね。(打つだけでなく)守って野球したいです」

 川端がそう話したのは、昨年12月の契約更改後の会見でのことだった。昨年は一軍で37試合に出場したが出番はほとんどが代打で、守ったのは一塁13試合と三塁3試合。しかも、三塁を守ったのは横浜(2試合)と甲子園だけで、本拠地の神宮では2018年10月3日のDeNA戦を最後にサードの守備には就いていない。

 そんな三塁への思い入れは分かるのだが、あらためて2020年の目標を聞かれた際にも「サードのポジションに就きたいだけです」と言い切ったのは、ちょっと不思議だった。打率3割を打ったのは2016年が最後で、昨年はプロ3年目以降では自己ワーストの.164(2017年は一軍出場なし)。かつての首位打者にとっては屈辱的な数字だろうし、目標に掲げるなら打撃に関するものとばかり思っていたからだ。

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腰の再手術は選手として「最後の望み」