在阪テレビ局の野球担当は、「矢野監督は本気で藤浪の復活を信じている」と取材活動の中で監督の思い入れも感じ取っている。

「あれだけの身体があって実績も残している素晴らしい投手、といろいろな場面で口にしている。昨秋キャンプで中日OB山本昌を臨時コーチに招いたのも、監督の強い思いからだった。他にも良いと思ったものは積極的に導入して、本人のやりたいようにやらせた。春季キャンプでは順調だっただけに、藤浪本人以上に、悔しい思いをしているのではないでしょうか」

 通算219勝の名投手である山本氏を臨時コーチとして招聘し、技術、精神面など徹底的に指導を受けさせた。そしてメジャーリーグで採用されている『ドライブラインベースボール』で動作解析もおこなった。復活に向けてチーム一丸となって前進している途中だった。

 大阪桐蔭高時代の2012年に甲子園で春夏連覇を果たし、文句のつけようがない実績を提げて阪神に入団。1年目から10勝を挙げるなど、中心投手として結果も残してきた。しかし制球難も年々、悪化して勝てなくなった。

「素直で向上心の塊のような男なんだけど……」

 ちょっとしたボタンのかけ違いが悪循環を生み出した、と球団関係者は続ける。

 開幕前3月26日には、合コンに参加したことによる新型コロナウイルス感染が判明。5月29日には、前日の練習遅刻が原因で2軍降格。その後も右胸の故障などがあり、1軍昇格が見送られていた。

「球団全体として猛省している。藤浪は根っからの好青年で、信用して任せきりのところがあった。でも彼も人の子で、人気球団の中心選手となって多少の甘えが出てしまったのか。過ちは取り返しがつかないので、これからどうするかをともに考えたい」

「結果は関係ない。今はそれ以外の部分に注目している。本人に自覚が出てきているのか」

 球団関係者は広島戦を迎えるにあたり、藤浪に“覚悟”はあるのか、そこに強い関心を示していた。

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