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「アイシング」は体の回復に逆効果という研究も スポーツ医学の最新事情

連載「スポーツ医が語る「スポーツ×医療」まるわかり講座」

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松本秀男dot.#ヘルス#病気#病院
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

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松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長

 このRICE療法の2番目の「アイシング」は、私たちにとって身近な方法です。とくに患部がジンジンして痛いとき、その部位を冷やすのは普通のことのように思われます。

 その第一の理由は、「痛み」が和らぐと実感しているからでしょう。それは科学的にも明らかであり、アイシングには以下のような作用があります。

・冷やすことで、痛みを感じる神経の伝達スピードが遅くなる。
・温度が下がると、からだの中の痛みを感じ取るセンサーである侵害受容器の閾値(いきち)が上がり、痛みを感じにくくなる。

 さらにもう一つ、「内出血」や「腫れ」を抑える作用もあります。

・血管を収縮させて、内出血や腫れを防ぐ。
・局所の炎症反応を鎮める。

 アイシングのやり方としては、1回15~20分程度までを限度として、患部を冷やし過ぎないように注意しましょう。アイシングの感受性には個人差があります。患部の感覚がなくなるまでやるのはやり過ぎで、痛みをみながら徐々に冷やすようにします。氷点下の氷や保冷剤を使うと、凍傷を起こすこともあるため、溶けかけの氷(0度)を氷嚢やビニール袋に入れて、タオルなどでくるんで用いると最適です。

 しかし、じつは最近、スポーツ医学の世界で、アイシングに対して否定的な研究も発表されています。それは、「炎症反応は自然治癒に必要なプロセスであり、むやみにアイシングをして抑えれば、かえって治癒を遅らせる」というものです。

 私たちのからだは、けがにより組織が損傷すると、短時間のうちにダメージを受けた組織を排除し、新しく再生しようとします。この生体の自然治癒の過程で、炎症反応性細胞からさまざまな種類の炎症性サイトカインと呼ばれる物質が分泌され、それらが相互に作用することによって組織修復がおこなわれています。そしてアイシングは、その邪魔をするとして、一部でアイシングを見直すべきだという動きが出てきているのです。

 確かに、炎症はからだにとって必要な生理学的な反応です。しかし、その炎症反応がときに過剰になる傾向があるという点が、問題なのです。アイシングの利点は、治癒過程で痛みを和らげるとともに、その過剰反応を抑える効果にあります。


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