約3カ月にわたる休校によって、子どもたちの学校教育の遅れや不足感が指摘されている。そんななか、「子どもたちの自学自習の助けになれば」「不安を感じる心が落ち着くように」と出版されたのが、日本書字文化協会(以下書文協)の大平恵理さんが手本・監修をつとめた『美しい文字で心がやすらぐ 書き込み式ペン字練習帳』だ。会長の大平さんと専務理事の谷口泰三さんに、本に託した思いと使い方のポイントなどを聞いた。

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■集中力が必須な「書写」で、さらに集中力を育む

「集中力がなければ、人は字を書くことすらできません。限られたスペースに字をおさめ、1~2ミリの長さの違いも書き分けて筆圧も意識する。それらを同時に調整しながら字を書く“書写”は、まさに集中力がなせる技であり、それを養う練習でもあります」

 そう話すのは、書文協会長の大平恵理さんだ。外出自粛期間中は、ペン字教室に通う生徒、約50名に電話指導を実施した。

「書いた字を写真で送ってもらい、電話で添削をするという原始的な試みでしたが、教科の勉強が突如失われてしまうという特異な環境下で、改めて字を学ぶことの大切さに気づいたという声もいただき、書写教育の重要性を感じられて嬉しかったですね。」

 一方で、休校に焦る保護者からは「子どもの集中力が落ちている」というSOSが多く寄せられた。子どもの集中力が削がれる瞬間があるとすれば、それは「つまずいたとき」。書写でいえば、思ったように書けなかったとき、そして失敗したときだという。

「字は、書き終わった瞬間に良し悪しがわかってしまいますから。思い描いたように結果が出なければ、投げやりな気持ちになります。見守る大人の側に、集中力を持続させられるような工夫も必要です」

■自学自習を促し、親の見守り方をサポートする

 しかし“書写”は、多くの親にとって“見守り方”すらわからない教科ではないだろうか。そこでこの本である。

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