「本書は基本的には書き込み式のドリル形式なのですが、ひらがな、カタカナ、漢字を上手に書くためのルールが論理的かつ詳細に解説されているページがあります。それをよく読んで、ルールを意識しながら書くだけで、必ず前より読みやすい字になるはずです。

 例えばひらがなの『れ』を書いてみてください。縦線をまっすぐ長く書くことで、格好のいい字になることに気づくと思います。字は、線の長さ、線の向き、空きを正しく意識するだけで格段に変わります」

 親が子どもの書いた字を確認する際も「長さは十分か」「払いの向きは正しいか」「空きは等分か」など、本書で紹介されているいくつかのルールを参照するだけでよい。

■感性を磨き、表現力も養う

 加えて書写には、感性や表現力に働きかける力もあるという。書文協で作文指導も行う谷口さんによると、

「言葉や文章は、書くことで感性が磨かれます。さらに繰り返し書くことで語彙力もつき、各自の心の中に言葉の蓄積ができる。前向きで美しい言葉だけを抽出して書かせる“お習字”と違い、書写の手本は一般的な文章。広い意味の言葉に触れられるチャンスです」

 書くことが苦手で、集中力が落ちているなと感じている子どもたちには、ぜひ「書写」を試してみてほしい。さらに字もきれいになるなら損はない気がするが、そんなに世の中甘くないだろうか。(ライター・元井朋子)