5.番茶
~遅い時期にできる晩茶の意味だった

 摘み残りの硬い葉からつくる、低級品の緑茶をさします。遅い時期にできるという意味の「晩茶」から転じて「番茶」になったといわれています。また、見張りなどの番をするための番小屋で、待機中に飲んだ安い茶を番茶とよんだとする説もあります。茶は、その年の新芽を摘んでつくったものを一番茶といい、二番茶、三番茶と続きます。そうした番外のお茶、さらには広く品質、地域などが主流から外れた茶を総称して番茶とよぶこともあります。

6.柴漬け
~紫蘇の葉とともに漬けるので紫蘇葉漬けだった

 ナス、キュウリなどの漬物ですが、なぜ「柴」がつくのでしょうか。もともとは、赤紫蘇(しそ)の葉とともに漬けることから、「紫蘇葉(しそば)漬け」や「紫葉(しば)漬け」だったといわれています。発祥の地である京都・大原が柴の産地であることや、大原女(おおはらめ)という行商の女性が柴とともに売り歩いたことから「柴」の字が用いられるようになったとされています。

7.麻婆豆腐
~お婆さんの豆腐料理が始まり?

 名称の「豆腐」は使われている素材だとわかりますが、「麻婆」とは何でしょうか。「麻」は「あばた」の意味です。実はこの料理を考案した女性が、顔に疱瘡(ほうそう)の跡があることから麻婆さんとよばれていたのです。つまり、麻婆豆腐とは麻婆さんの豆腐料理ということです。この女性は、中国・四川省の陳富文の妻で、麻婆豆腐の正式名称は陳麻婆豆腐といいます。

※漢字エンタメ誌『みんなの漢字』2020年7月号から抜粋
監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)