■超音波検査や尿流測定などで診断

 前立腺肥大症が疑われたら、問診やIPSSスコアで自覚症状を評価、直腸内指診、尿検査、尿流・残尿測定、血清PSA(前立腺特異抗原)測定、超音波検査などがおこなわれる。PSA測定は前立腺がんの鑑別のために重要だ。超音波検査では前立腺の大きさをみる。尿流測定はトイレ型の検査機器に排尿すると、排尿の様子がグラフで表される(図参照)。

 長久保病院理事長の桑原勝孝医師はこう話す。

「尿流測定は、それまで漠然と感じていた不調を目に見える形で提示されるので、患者さんは納得しやすく、治療に前向きになるケースも少なくありません」

■薬で尿道を広げて排尿症状を改善

 治療法には、生活指導などによる経過観察(保存療法)と、薬物療法、進行した場合には手術がある。多くは症状に困って受診するため、経過観察だけというケースは少なく、薬物療法から治療をスタートさせることになる。

 前立腺肥大症で用いられる薬は、大きく分けて3種類ある。

 第一選択となるのは、前立腺の平滑筋という筋肉を弛緩させて、尿道への圧迫を解除し、排尿症状を軽減する薬だ。α1ブロッカーとPDE5阻害薬(一般名・タダラフィル)という、作用の異なる2種類がある。α1ブロッカーは即効性がある。タダラフィルは、勃起不全(ED)の治療薬と成分が同じなので、EDを合併している前立腺肥大症ではその点でも改善が見込める。単剤で効果が上がらない場合、この2種類の薬を併用することもある。いずれも副作用として立ちくらみや頭痛、めまいなどが表れるので注意が必要だ。

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