開幕から6試合連続完投勝利の無双状態から、一転して長いトンネルに入ってしまったのが、93年の小宮山悟(ロッテ)だ。

 4月10日のオリックス戦を完投勝利で飾ると、その後も投げるたびに完投、また完投で連勝街道を驀進。5月13日の近鉄戦も9回2失点で勝ち投手となり、史上初の開幕から6連続完投勝利を達成した。

 ところが、ここから悪夢の6連敗を喫し、チームも最下位転落。悩んだ小宮山は、連勝中のビデオを何度も見たり、走り込みを多くするなど、トンネル脱出に向けて努力を続けた。

 そして、7月11日の西武戦で5安打1失点の完投勝利。チームも4日ぶりに最下位を脱出した。59日ぶり勝利の小宮山は「もう一度、勝ちつづけるプレッシャーを感じたいね」と復活宣言も、この年自己最多の12勝を挙げながら、14敗と負け越すなど、最後までチグハグなシーズンだった。

 ちなみに当時のロッテも、92年、98年と4月は首位だったのに、いずれも終わってみれば最下位と、“開幕直後だけ強いチーム”のイメージがあった。

 今度はチーム編。開幕直後に驚異のロケットスタートに成功しながら、5月以降、急失速したチームも少なくない。

 93年の広島は、4月15日に横浜を11対0と下し、球団史上初の開幕5連勝を達成すると、同17日の巨人戦も、0対2の5回に連打とブラウンの好走塁で一気に逆転。連勝記録を「6」に伸ばした。

 開幕7連勝がかかった翌18日の巨人戦は、延長戦の末惜敗したが、9回に3点差を一挙に追いつき、「あの粘りというのはねえ」と山本浩二監督を感服させた。その後も白星先行で、4月を11勝4敗と大きく勝ち越し、2年ぶりの優勝も期待されたが、5月は一転して二度にわたって5連敗を記録するなど8勝15敗と失速。さらに8月末から9月にかけて11連敗を喫し、結局、優勝したヤクルトに27ゲーム差の最下位、山本監督も引責辞任と、まさに“春の珍事”を地で行くような結果となった。

次のページ
「プロ野球史上最大の転落劇」