2016年の開幕直後に“無双状態”となった阪神の江越大賀 (c)朝日新聞社
2016年の開幕直後に“無双状態”となった阪神の江越大賀 (c)朝日新聞社

 開幕直後だけ凄い成績を残した選手といえば、1979年の田代富雄(大洋)が思い出される。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 4月7日の開幕戦、前年の日本一・ヤクルトを相手にリーグ初、史上2人目の開幕戦3本塁打を放ち、3打数3安打4打点2四球の打率&出塁率10割スタート。開幕3戦目の広島戦でも4号を放つなど、3試合通算10打数6安打7打点の固め打ちで、シーズン40発以上も楽勝と思われた。

 ところが、同13日の巨人戦で4打数無安打2三振に終わり、開幕からの連続試合安打も「4」でストップすると、4月終了時点で打率2割4分、5本塁打と急降下。さらにシーズンの最後には、日本最多の5試合連続併殺打も記録し、打率2割3分5厘、19本塁打とまさかの結果に……。

 77年の開幕直後には5試合連続本塁打も記録しており、「ホームランか三振かの大味な主砲だったけど、愛すべき選手だった」と懐かしむファンも多いはずだ。

 同じく79年の開幕直後、彗星のようにデビューしたのが、近鉄のルーキー右腕・香川正人だ。

 4月10日の開幕3戦目、ロッテ戦で7回から2番手でプロ初登板すると、2回2/3を無失点に抑え、いきなりプロ初勝利。6月前半まで5勝0敗2セーブと負け知らずの大活躍も、間もなく肘を痛めて登録抹消。その後、一度も1軍のマウンドに上がることなく、83年限りで引退した。ルーキーイヤーの開幕直後限定という短い期間ながら、チームの前期優勝に貢献し、勝率10割の生涯記録も残した“伝説の投手”である。

 一方、開幕直後限定の“伝説の打者”と呼べそうなのが、16年の江越大賀(阪神)だ。

 4月3日のDeNA戦でシーズン1号を放つと、同9日の広島戦まで出場3試合にまたがる3打席連続弾と4試合連続本塁打の快挙を達成。だが、4月下旬から21打席連続無安打と当たりが止まり、その後は1軍と2軍を往復しながらシーズンを終えた。以来、恵まれた身体能力をなかなか発揮できずにいるが、6年目の今季は“新たなる伝説”を期待したい。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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