プロ野球史上最大の転落劇」に泣いたのが、06年の巨人だ、3年ぶりに原辰徳監督が復帰し、ロッテからイ・スンヨプ、オリックスからパウエルと投打の主力を補強。開幕の横浜3連戦を2勝1敗と勝ち越して首位に立つと、4月8日から1分を挟む8連勝を記録するなど、同18日の時点で13勝2敗と、2位・中日に4ゲーム差をつけた。4月は球団最多タイの17勝6敗2分と大きく勝ち越し、「今季は巨人でほぼ決まり」の声も聞こえてきた。

 だが、5月の交流戦を境に急失速。6月には6勝19敗と月間最多の球団新記録をつくり、8月には最下位まで転落した。最大貯金「14」からの転落劇は、プロ野球史上初の屈辱だった。

 最終的に4位まで戻したものの、2年連続勝率4割台、4年続けてV逸と球団のワースト記録を相次いで塗り替えてしまった。

 02年、星野仙一監督就任1年目の阪神も、開幕直後は、前年まで4年連続最下位のチームとは思えないような確変ぶりだった。

 3月30日の開幕戦で、井川慶が巨人相手に1失点完投勝利を収めると、勢いに乗って、球団タイ記録の開幕7連勝。4月10日の広島戦に勝ち、開幕10試合で9勝と、神がかり的な強さを誇った。

 だが、サッカーW杯開催に伴う変則日程で、ローテーションに余裕ができたはずの6月に泥沼の8連敗を含む4勝13敗と急失速。その後も濱中治、矢野輝弘ら主力に故障者が続出し、4位でシーズンを終えた。

 とはいえ、原巨人も星野阪神も、翌年は揃ってリーグ優勝。「凄かったのは開幕直後だけ」の苦い経験は、けっして無駄ではなかった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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