DeNA、中日は複数のサウスポーを先発に向けて揃えている。

「DeNAは左が充実している。東克樹(今年2月にトミー・ジョン手術)がいないのは痛いけど、もともと先発の石田健大のほか、今永昇太、濱口遥大と実績十分な左が揃う。3年目の櫻井周斗に加え、砂田毅樹もいる」

 18年新人王の東の不在を感じさせないほどの強力サウスポー陣。右の先発が数枚出てきた時に、この中からブルペンへ回せる強みもあるほど豊富だ。

「中日はなんといっても大野雄大の復活が大きい。日本代表のエースと言われるほどの安定感が戻ってきた。小笠原慎之介に加えて、新外国人ルイス・ゴンサレスも良さそう。エンニー・ロメロも波がなければ期待できる。新人の橋本侑樹まで絡むと左の厚みが一気に増す」

 また中日では新たなクローザーとなった岡田俊哉の活躍がチーム浮上の鍵を握るともいう。

 広島、ヤクルトの左投手に関しては、多少の不安を感じている。

「広島はクリス・ジョンソンと昨シーズン7勝で頭角を現した床田寛樹がおり、先発に左が2枚揃う。問題は現状、ブルペンを含め信頼できる左投手がヘロニモ・フランスアのみということ。数年前はフランスアも先発候補であった。後ろがあまりに心許なくて、最後は抑えまで任された。この状況が続くようでは厳しい」

 昨年、4連覇を逃した原因はフランスア頼みのブルペン陣にも原因があった、とも語る。昨年の床田のような新戦力が出れば、投手陣は盤石に近づくが……。

「ヤクルトは高橋奎二がどこまで成長するかにかかっている。高橋に加えベテラン石川雅規がローテーションを守れれば、おもしろい存在になる。年間を通じて良い戦いができるかは左腕2人にかかっている」

 現状ではヤクルトの苦戦は避けられない。しかし本格派左腕の覚醒次第では、シーズンを十分戦える。野村克也さん曰くの『弱者の兵法』を見せて欲しいものだ。

 左腕投手がいるかどうかで、ゲームプランは大きく変化する。以前は存在自体がレアだったが、今は野球を始める時から左腕を作り出す時代だ、と川口氏は言う。

「左利きに対する世間の環境や認識が大きく変わった。同じ左腕でも、今と昔では生まれてきた過程が異なる。投げる、書く、箸を持つなど、左利きということはあまり良いことではなかったので矯正されることがほとんどの時代もあった。必然的に左投手の数自体が少なかったので、打者も対応しにくかった」

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「スポーツをやる時に左は有利」