つば九郎(※画像)の人気の陰に完全に隠れてしまった燕太郎は悲劇のマスコット? (c)朝日新聞社
つば九郎(※画像)の人気の陰に完全に隠れてしまった燕太郎は悲劇のマスコット? (c)朝日新聞社

 ヤクルトスワローズのマスコットといえば、「つば九郎」を思い浮かべる人も多いことだろう。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 1994年にデビューしたつば九郎は、ペンギンを思わせる肥満体型と自由奔放なキャラクターから人気者になり、08年にはプロ野球のマスコットとして初めて開催試合連続1000試合出場を達成。オール平仮名で綴ったブログも注目を集め、11年のバレンタインデーには、青木宣親、由規に次いでチーム3位の98個のチョコが届くほどのモテモテぶりだった。

 現在はマスコット仲間として、妹の「つばみ」、メキシコ出身の覆面レスラーという設定の「トルクーヤ」がいる。

 そして、かつてもう1体、「燕太郎(えんたろう)」という名の“悲劇のマスコット”がいたことを覚えているファンは、どれだけいるだろうか?

 05年に誕生した燕太郎は、肥満体型がネックとなり、アクティブな動きができないつば九郎に代わって、派手なアクロバットの演技でファンにアピールする目的で仲間入りした。

 顔こそつば九郎に似ていたが、人間に近いスリムな体型とあって、得意技のブレイクダンスをはじめ、ダンスやアクロバットも自由自在。チームの勝利時には見事なバク転も披露した。

 また、12球団のマスコットで唯一ユニフォームを着用していないつば九郎に対し、燕太郎はユニフォーム姿で、背番号は「102」。08年から打撃投手になった石堂克利が同じ番号を着けると、ヤクルトをもじった「8960」に変更した。同年のフレッシュオールスターでは、松山出張中のつば九郎に代わり、ヤクルト代表として参加。逆立ちの演技を見せ、キレのある動きで観客を驚かせた。

 だが、茶目っ気たっぷりのキャラにもかかわらず、“鳥要素”に欠ける外見などから「キモい」と酷評され、全国区のスターになったつば九郎の陰に隠れっぱなし。さらに不運なことに、中日のマスコット「ドアラ」が、バク転などのアクロバット演技で、つば九郎の強力ライバルになり、キャラがかぶった燕太郎は、ますます影が薄くなった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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「違うマスコットを作ったほうが…」