(イラスト/渡辺裕子)
(イラスト/渡辺裕子)

「歯周病」という病名は広く一般の方々に認知されるようになりました。しかし、歯周病についての正しい情報が得られているとはいえません。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会は、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』を発刊しました。本書から、「プラークは食べかす?」「歯周病は口臭の原因になる?」など、Q&Aの一部を抜粋してお届けします。

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Q 国民の7割が歯周病ってホント?

A 35歳~59歳の約7割が歯周病

 7割という数字は厚生労働省実施の「歯科疾患実態調査」(2016年)がもとになっています。歯周病に特徴的な歯肉の所見(歯周ポケットがある、歯石の沈着、歯周ポケット測定後の出血)がある人の割合を調査したところ、20歳~34歳で約6割、35歳~59歳では約7割となっています。60歳以降では歯のない人が増え、歯肉に問題がある人の割合は減りますが、歯がある人の約7割に歯肉の所見がある結果となっています。歯周病は進行するまで症状がないため、気づかないだけで、この本を読んでいるあなたも歯周病の可能性が大なのです。

Q プラークは食べかす?

A 食べかすではなく、細菌の塊

 歯を磨かないでいるとやがて歯面がザラザラ、ベタベタしてきます。よく見ると黄白色の粘着物が……。それこそがプラーク(バイオフィルム)。歯に特有のものであることから、デンタルプラークと呼ばれています(本書ではプラークまたはバイオフィルムと記載)。

 プラークは主に細菌で構成されており、その栄養素となるのが食べかすです。さまざまな細菌が集まり、プラークは成熟し、次第に歯周病菌などの悪性度の高い菌が増えていきます。このため、食後の歯磨きが大事になるというわけです。

Q 歯周病で歯肉が下がるのはなぜ?

A 炎症で歯肉と歯面の付着が壊されてしまうため

 プラークが歯と歯肉の境目に付着すると、歯肉に炎症が起こります。炎症は細菌がからだの奥に入るのを防ぐ生体の防御反応ですが、同時に自己の組織も破壊します。そして歯肉と歯(歯根)との付着が失われ、間の溝が深くなり、歯周ポケットが形成され、歯の周りの骨も吸収してしまいます(歯周炎)。その結果、歯肉も下がってしまいます。

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歯周病は口臭の原因になるのか?