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コロナ禍の今こそ必要な“ネガティブ・ケイパビリティ”という考え方

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 新型コロナウイルスの災禍が猛威を奮い続けるなか、今、一冊の本が注目を浴びている。

 精神科医で作家の帚木蓬生さんが2017年4月に上梓した、『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』(朝日選書)だ。

“ネガティブ・ケイパビリティ”とは、すぐには答えの出ない、どうにも対処しようのない状況に耐え、受け止める力のことだ。

 19世紀のイギリスの詩人、ジョン・キーツが、シェイクスピアがこの能力を有していたと、兄弟に宛てた手紙のなかで触れていたことに端を発し、その170年後、英国の精神科医、ウィルフレッド・R・ビオンが、患者と対するために大切な素養であることを再発見する。

 著者の帚木さんが、この概念と出会ったのは1985年。精神科医として6年目に入った頃だ。米国の医学雑誌に掲載されていた『共感に向けて。不思議さの活用』という論文のなかでだった。

「当時、精神科医として、日々の臨床活動のなかで、無力感にさいなまれていたのです。治療がちっとも奏功しない患者さんがいるということに対してです。しかし、ネガティブ・ケイパビリティの考え方を通じて、患者さんに寄り添うこと、答えのない宙吊り状態に耐えて、じっと待ち続け、見届けるということの大切さを教えられました。それで、気持ちが楽になったのです」

 帚木さんはそう振り返り、こう続ける。

「先行き不透明な今の時代にあっては、精神科医のみならず、一般の人々にも、ぜひ知ってもらいたい概念だと思います。世の中というものはほとんど思い通りにはいきません。自分の中で解決のつかない課題に対して辛抱強く考える能力を持つこと、そして、他者や理解できないことに共感し、寛容になる心を持つことは、今を生きていくためにはとても重要です」

 これに対し、今の世の中を跋扈する概念が、到達目標を掲げ、効率主義や即断即決、成果主義を良しとするポジティブ・ケイパビリティだ。

「政治家、経済人、教育者……、世の中全体が、浅はかに早急な結論を求め過ぎです。わからないと、結論が出ないと不安になり、同意見に共感して、異なる意見は排除する傾向もあります。ソーシャルネットワークなどのコミュニケーションはそれを助長し、つい過激な意見に飛びついてしまうでしょ。これは決して世の中を良くしません」


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