インターハイ登山競技に挑む茨城県立水戸第一高校山岳部(写真=同校提供)
インターハイ登山競技に挑む茨城県立水戸第一高校山岳部(写真=同校提供)

 新型コロナウイルス感染症の拡大で、残念ながら今年のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)は開催されないことに決まった。この大会を目標にがんばってきた高校生には励ます言葉が見つからない。これまでの苦しいトレーニングは無駄にはならない。高校生アスリートたちが、卒業後、さまざまな世界で活躍することを祈りたい。

 インターハイは憧れの大会である。しかし、出場はかなりむずかしい。サッカー、ラグビー、バレーボール、バスケットボールなど競技人口が多い種目では、推薦、あるいは留学生受け入れなどで選手層を強化している高校が強い。全国から優れた生徒を集められる私立高校は圧倒的に分がいい。公立高校はなかなか入り込めない。まして進学校となれば、かなりむずかしい。

 しかし、インターハイで公立進学校(難関大学への進学実績が高い学校)が多く出場している種目がある。

 登山競技だ。

 最近2年間にインターハイに出場した、おもな公立進学校を見てみよう。

●2019年
<男子>前橋(群馬)、長田(兵庫)、水戸一(茨城)、富士(静岡)、宮崎大宮(宮崎)、金沢泉丘(石川)、丸亀(香川)、岡崎(愛知)、新潟(新潟)、松江北(島根)、八戸(青森)、帯広柏葉(北海道)、富山(富山)

<女子>富士(静岡)、盛岡一(岩手)、長田(兵庫)、横手(秋田)、高知追手前(高知)、岡山操山(岡山)、高崎女子(群馬)、修猷館(福岡)、松山南(愛媛)、水戸一(茨城)、宮崎大宮(宮崎)、釧路湖陵(北海道)、甲府一(山梨)、宮崎西(宮崎)、八戸(青森)、栃木女子(栃木)、富山(富山)、新潟(新潟)、金沢二水(石川)

●2018年
<男子>神戸(兵庫)、前橋(群馬)、丸亀(香川)、金沢泉丘(石川)、福岡(福岡)、富士(静岡)、富山(富山)、八戸(青森)、旭丘(愛知)、鶴丸(鹿児島)、北野(大阪)、郡山(奈良)、旭川東(北海道)

<女子>藤枝東(静岡)、高崎女子(群馬)、盛岡一(岩手)、長田(兵庫)、富山(富山)、甲府一(山梨)、修猷館(福岡)、松江北(島根)、長岡(新潟)、高知追手前(高知)、宮崎大宮(宮崎)、浦和一女(埼玉)、金沢二水(石川)、田辺(和歌山)、畝傍(奈良)

 前記のうち、今年、難関大学合格者数で注目された高校として、北野の京都大1位(100人)、修猷館の九州大1位(126人)がある(大学通信調べ)。

 登山競技は山登りのスピードを競うというわけではない。登山に必要な技術、体力、知識が求められる。これらを総合的に評価するため、競技では次の項目が課せられる。

(1)体力 (2)歩行技術 (3)装備 (4)設営・撤収 (5)炊事 (6)気象(天気図の作成と解析) (7)記録・計画(メンバー表、概念図、断面図、個人装備、食料計画) (8)自然観察(読図、地形と植生の観察) (9)救急 (10)マナー(自然保護への配慮)

 評価方法はこれらの項目の合計を100点満点として減点法で採点する。その結果、最多得点をあげた高校がインターハイ優勝となる。(6)(8)(9)ではペーパーテストが課せられる。

 なぜ、登山競技に公立進学校が多いのか。大会関係者、公立進学校山岳部(登山部)指導者の話をまとめると次のようになる。

次のページ