しかし、そうなる前にジャニーズをやめ、モデル活動をしたあと、94年に俳優デビュー。翌年、いしだ壱成や香取慎吾、そしてアイドル時代の浜崎あゆみも出演したドラマ「未成年」(TBS系)でブレークを果たした。

 とまあ、若くしてジャニーズをやめた人が成功したケースは極めて珍しい。大手事務所の研音に所属できたことも幸いしたが、そのブレークと生き残りには彼の「人徳」のようなものも関係していたように思われる。言い換えれば「かわいげ」とでもいった魅力だ。

 というのも、歌手・反町隆史に「ロイヤルミルクティー」という隠れた名曲がある。シングル曲ではないが、ファーストアルバム(97年)のラストを飾る、尾崎豊風のバラードだ。「POISON」などと同様、詞も本人。「フレームの世界で生きている自分」が有名人ゆえの不安を告白しつつ、別れた彼女のことを切々と歌いあげている。

 タイトルの「ロイヤルミルクティー」はその彼女が好きだった飲み物で、当時は「何の興味もなかったそれ」を今では自分も好きになり「安らぎ」になっているという内容だ。これを聴いたとき、この人は恋愛によって変わるタイプで、そのことを喜べる人だと感じたものだ。どちらかといえば、女性に多く見られる感性である。

 そんなフェミニンな感性が「かわいげ」となり、芸能界を生きるうえでプラスになっているのではないか。たとえば、彼はドラマ「相棒」シリーズ(テレビ朝日系)に5年前から出演している。4代目の相棒として、何かと気難しいことで知られる主演・水谷豊にも気に入られ、家族ぐるみのつきあいだという。おそらく、人と合わせることも自然にできるタイプなのだろう。

 そして何より、こうした感性は夫婦関係に役に立つ。特に女優というのは意外と男っぽさを持つとされ、松嶋もおそらく例外ではない。そういう意味では、妻が飼いならしたというより、夫がうまく合わせている関係に思えるのだ。

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松嶋が「お手本」にする海外の名女優