横浜ベイスターズ時代の中根仁 (c)朝日新聞社
横浜ベイスターズ時代の中根仁 (c)朝日新聞社

 プロ野球選手も人の子。ファンあってのプロ野球とわかっていても、時には心ないヤジや暴言に堪忍袋の緒が切れてしまうこともある。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 ヒーローインタビューを受けていた選手が、スタンドからの執拗なヤジにぶち切れるハプニングが起きたのが、2008年5月24日の阪神vsソフトバンク(福岡ヤフードーム)だ。

 1点を追う阪神は9回2死満塁、赤星憲広がホールトンから左前タイムリーを放ち、鮮やかな逆転勝利を収めた。

 勝利の立役者となった赤星は、試合後のヒーローインタビューで「僕も興奮しました」とコメントしながらも、どこか上の空。そして、「とにかく、ツーアウト満塁だったんで…」と答えている最中、突然スタンドのほうに顔を向けると、「入ってねえんだよ、この野郎!」と言い放った。

 ふだん温厚な赤星が語気を荒げる姿は珍しく、テレビを見ていた人には何が起きたのか、わからなかったはずだが、実は、敵地でのインタビューだったため、あくまでテレビ中継用で、場内放送されなかったことが原因。スタンドのファンが「もっと聞こえる声で喋らんかい!」などとヤジったため、「マイクが入っていないから、聞こえなくて当たり前だ」と言い返したのである。

 このシーンがそのまま放映され、ネット上でも拡散されてしまったため、翌日の試合前、赤星はテレビ関係者に謝罪している。

 ヤジを飛ばすファンにその都度言い返し、応酬シーンがネタになったのが、横浜時代の駒田徳広。現在でも「野球っつうのはな、ヤジる為にやってるんじゃねーんだよ!」などのセリフテロップ入り画像をネット上で見ることができる。また、巨人時代の長嶋一茂は、96年4月10日のイースタン、日本ハム戦(相模原)の試合中、「辞めちまえ!」「引退しろ!」としつこくヤジる男性ファンを「うるさい、黙っとけ!」と一喝した直後、豪快な弾丸アーチを放ち、本当に沈黙させている。

 ぶち切れるのは選手ばかりではない。ヤクルト・野村克也監督が、試合後にスタンドのファンと舌戦を繰り広げたのが、92年9月3日の巨人戦(神宮)だ。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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怒った野村監督は「うるせえ、この野郎!」