予期せぬハプニングにベンチ内は騒然としたが、数分後、中根は原辰徳ヘッドコーチになだめられ、しぶしぶ矛を収めた。

 中根が怒ったのは、試合中に杉山茂バッテリーコーチから「こいつは超ヤマハリバッター」などとヤジられたことに対してだった。ヤジはこの日だけではなく、「(5日の)大阪ドームでもしつこかった。宮田(征典)さんと杉山さんの2人」と証言する横浜ナインも。

 名指しされた杉山コーチは「(捕手の)阿部(慎之介)に気をつけろと言っただけ。中根が憎いわけでもない」とヤジった事実を否定したが、これに対し、横浜・森祇晶監督は「巨人軍たる者があんな汚い下品なヤジはいかん。しかも、今日だけじゃないからな」と“ヤマハリ”以外のヤジもあったことをほのめかした。

 そんな騒動の余波が続く翌13日、「巨人にだけは負けられない」と奮起した横浜は12安打を放ち、6対5でリベンジ。痛い1敗を喫した巨人は同年、ヤクルトの逆転Vを許す羽目に……。ヤジの代償は高くついた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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