初回に5点を先制したヤクルトだったが、先発・高野光が2回に8失点の乱調で、終盤の反撃もあと一歩及ばず、8対9の敗戦。2位・巨人に1・5ゲーム差に詰め寄られた。

 事件が起きたのは、野村監督がベンチからクラブハウスに引き揚げようとしたときだった。スワローズの帽子をかぶった中年の男性ファンが一塁側スタンドから身を乗り出し、「野村!何で岡林(洋一)を早く出せないんだ!」と叫んだ。さらに「来年は、監督は古田(敦也)だ!」と痛烈なヤジを飛ばした。

 すると、野村監督はピタリと足を止め、「うるせえ、この野郎!どこのファンだ。ヤクルト?だったら、ちゃんと応援しろ!」と言い返した。一ファンの采配批判がよほど腹に据えかねたのか、クラブハウスでは風呂にも入らず、「贔屓の引き倒しをするファンもいる」と不機嫌に吐き捨てると、愛車・ベントレーのアクセルを思いきり踏み込み、早々と家路についた。

 神宮では5日前の8月29日にも、中日・高木守道監督がヤクルト戦の試合後、「明日は落合(博満)を外せ!」と叫びながら、飲み物の入った紙コップを投げつけてきたファンに、「バカ野郎!」と叫んで紙コップを投げ返す騒ぎが起きたばかり。

 その高木監督だが、2度目の監督時代の13年4月14日の広島戦(ナゴヤドーム)でも、8回1失点と好投した先発・山内壮馬を交代させたことに対し、一塁ベンチ上のファンから「何で完投させねえんだ!」とヤジられると、「うるせえ!バカ野郎!降りてこい!」と怒りを爆発させている。“瞬間湯沸かし器”の異名をとり、数々のエピソードを提供したミスター・ドラゴンズは今年1月17日、ヤクルトにID野球を浸透させた知将も2月11日に帰らぬ人となった。

 相手ベンチのヤジにぶち切れた選手が、試合後に怒鳴り込むというビックリ仰天の事件が起きたのが、01年9月12日の巨人vs横浜(横浜)だ。

 巨人が7対4で勝利した直後、横浜の外野手・中根仁が「そんなことまでして勝ちてえのか!」と血相を変えて、三塁側巨人ベンチに飛び込んできた。

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「巨人軍たる者があんな汚い下品なヤジはいかん」