加えて、ラジオ体操をすると筋肉の柔軟性が保たれて血行がよくなる。また、ジャンプなどの脚を使った運動は、ホルモンの働きを促して骨を強くするなど、しなやかな体をつくる数々のメリットももたらす。これらは考え抜かれて設計されたからこそ得られるラジオ体操の運動効果である。

 ラジオ体操のルーツを辿ればヨーロッパで発祥した「医療体操」がある。これは、スウェーデンの王立中央体操学校校長を務めたP.H.リング(1776~1839年)が考案したもの。医療をベースにした体操で、老若男女、だれでもできる体操なのだ。

■ラジオ体操は体だけじゃない メンタルにも効く

 神奈川県立保健福祉大学・健康サポート研究会などの最新調査では、正しいフォームや呼吸でラジオ体操をすると、血行が促進されることがわかっている。血液は、全身に酸素や栄養をめぐらせたり、老廃物を排泄したりする役割を担っており、血行がよくなると体の疲れやむくみがとれやすくなる。

 ラジオ体操の場合、指先など末梢の血行まで促進される。末梢の血行不良は、手脚の冷えや肩こりといった不調に直結しやすく、筋力のない人ほどその影響は出がち。正しいラジオ体操で血流がアップできると、不調やコリの改善にも効果が期待できるのだ。

 また体操による筋肉の伸縮は、幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促し、深呼吸とともに自律神経に働きかけてリラックス効果をもたらす。

 加えて、体を動かして熱を発生させると、その熱を外に放出して体温を一定に保とうとする機能が働く。暑いと発汗して体温を下げ、寒いと震えて体温を上げようとするのも、この体温コントロール機能(自律性体温調節反応)が働いている証拠。ラジオ体操は、人間の自律的な機能にも刺激を与え、心と体の調子を整えるのだ。

 このほかにも、生活リズムが整うなどのメリットも多いラジオ体操だが、注意点も。ラジオ体操は誰でも簡単にできる体操だが、腰や膝に痛みがある人は注意が必要だ。無理のない範囲で行いたい。また、体操そのものの消費カロリーは必ずしも多くなく、ダイエットへの効果は認められていない。正しく行うことで柔軟性が増し姿勢がよくなる等の効果は見込めるが、シェイプアップなどへの過度な期待は禁物だろう。

 全国ラジオ体操連盟は、緊急事態宣言を受けて、朝のラジオ体操の当面の休止を促している。

 この機に、しばらくは「おうちでラジオ体操」をしてみてはどうだろうか。