もちろん志村さんサイドには許可を取らず、二人の事務所が勝手にやっていたことだったのだが、結果、そのまま事務所は潰れ、ギャラも未払い。何もかもゴタゴタになっていく中、二人はビートたけしに拾われる形で「たけし軍団」に入る。

 軍団加入後、多くの番組で仕事をするようになる中、偽ドリフから10年近く経って、志村さんと初めて会うことになった。

 自分の意志ではないとはいえ、タカとしては偽物をやってしまっていた過去があったので、そのことを話さないといけないと思っていた。しかし、初対面ではその事実を告白できず、会って二回目の時に「実は…」と意を決して伝えた。

そこで、志村さんがどう出るのか。全く分からない中での告白だったが、すぐさま志村さんは「えぇ、そうだったの!面白いなぁ!」と大爆笑。今日まで繋がる縁が生まれた。

■ビートたけしとの縁

 また、そこから志村さんとたけしとの縁も繋がっていく。志村さんとたけしと言えば、長らくTBSの「全員集合」、フジテレビの「オレたちひょうきん族」と、両局の威信をかけた視聴率戦争の看板同士でもあったので、なかなか接点が生まれることはなかった。

 しかし、時が経ち、テレビ朝日「神出鬼没!タケシムケン」(1999年から2000年)などで共演の機会も生まれ、その流れで、志村さんとたけしが飲みに行くこともあったという。そこでは「けんちゃん」「たけしさん」と呼び合い、店の会計は志村さんより3歳上のたけしがしていたという。

 そんな中、タカがとりわけ印象的だと振り返るのが、共演番組の収録後。たけしがテレビ局から車で出て行く時、スタッフや軍団が一列になってたけしの車に頭を下げて見送るのだが、いつの間にか、列に志村さんも加わっていて同じように深々と頭を下げていたという。

 無論、その時点で既に志村さんも大御所だったが、偉ぶることなく、計算でもなく、シンプルに先輩に敬意を払う。その素直さと柔軟性に心が揺さぶられたとタカは話す。

 どの角度から見ても魅力の塊。そんな人物が愛されないわけがない。そして、その人物が急にいなくなって悲しくないわけがない。(中西正男)

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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