■メリット・デメリットを知って、活用する

 特に気をつけたいのが、QRコード決済の不正利用です。

 2019年7月に発生したQRコード決済サービス「7pay(セブンペイ)」の事件を知っているでしょうか。これは、不正アクセスによって、7payのユーザーがIDとパスワードを盗まれてアカウントを乗っ取られ、不正に決済を行われた事件です。

 被害者は800人以上、被害総額は3861万円にも及び、7payはサービス開始からわずか3カ月で廃止に追い込まれました。

 原因は、7payのシステムの脆弱(ぜいじゃく)性にあるといわれており、すべてのQRコード決済に同様の事件が起きるとはかぎりません。

 しかし、QRコード決済は数年前から始まったばかりの新しいサービスです。店舗側にとっても手軽に導入できるだけに、今後、予期せぬトラブルが発生する可能性もあります。そう考えると、スマホ操作に不慣れな人は無理に導入する必要はないのかもしれません。

 また、災害時に弱いのもキャッシュレス決済の特徴です。停電やシステム障害が起きると、とたんに使えなくなってしまうからです。

 こういったメリット・デメリット(図表)を理解したうえで、定年後に向けてキャッシュレス決済を上手に導入していきましょう。(文/音部美穂)

監修◯岩田昭男(消費生活ジャーナリスト)1952年生まれ。早稲田大学大学院修士課程終了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。クレジットカード&電子マネー分野では、すでに30年間にわたって業界の定点観測をしている。主な著書に『キャッシュレス覇権戦争』(NHK出版)など。

※週刊朝日MOOK『定年後のお金と暮らし2020』から抜粋