そんな高梨にとって今季は、昨季試した様々なことを徐々にまとめて、自分のジャンプ技術を安定させ始めるシーズンになる。7月末からのサマーGPも、第1戦は条件の悪い追い風の中でもしっかりジャンプをまとめてルンビーに競り勝って勝利を挙げた。第2戦も1本目に大量リードをすると、2本目は強い追い風の条件の中でも耐えるジャンプをして2勝目を挙げる安定感を見せた。

 そして帰国後も妙高サマージャンプ大会で圧勝と順調。サマーグランプリは最終第3戦は出場しなかったが、2戦2勝で昨年に続いて総合優勝を果たしている。

 さらに冬と同じ氷を張った助走路で行う10月26日の全日本選手権ノーマルヒルでも圧勝し、翌日のラージヒルのNHK杯でも伊藤有希に競り勝ち、冬シーズンへの準備も着々と出来ている状態だ。

 サマージャンプの助走路は、角度が緩やかになるRの部分で詰まる感じになって速度が落ちるが、冬の氷の助走路だとそのRがサマー台よりスムーズに滑る、抜けのいい状態になる。その変化にどう対応するかも重要であり、選手の誰もが最大の課題にするところだ。

 今季の女子W杯開幕戦は、12月6日からのリレハンメル大会で、2試合ともラージヒルで行われる。このジャンプ台は女子W杯が始まって以来高梨は何度も勝っているところだが、「本当はあまり得意ではないジャンプ台だ」と話していたこともある。そんなジャンプ台をどう攻略するかで、彼女の今季が見えてきそうだ。

 ただ、女子のレベルが上がってなかなか勝てないような状況も、高梨自身が「女子ジャンプのレベルが上がって戦い自体がスリリングになれば、それだけ注目してもらえるようになる」と待ち望んでいたものだ。さらに「強い選手に勝ちたい」とワクワクする思いは、ジャンプを始めて世界の舞台へ行き始めた頃と同じだ。いろいろ悩みながらもジャンプを楽しみ、戦いを楽しむ気持ち。それが今の彼女を鼓舞させている。

 まずは表彰台。そこからいち早く初勝利につなげて流れに乗りたい。(文・折山淑美)