これはアンケートの集計結果等を元に作成したもので、詳細な研究結果に基づくものではありませんし、個人による差も大きいのですが、一定の目安として参考にできるものです。日本ではスポーツの世界で根性論がまだまだ根強く、指導者や親が子どもに無理強いをさせてしまうケースが多く見られます。また子ども自身もレギュラーになりたい一心で、痛みを我慢することもあり、そういった背景がスポーツ障害を起こしやすくしています。外国ではスポーツに対して、もっとおおらかです。子どもたちに楽しめないスポーツはやらせるべきではないでしょう。

 最後に、スポーツドクターにかかることの一番の違いを、強調しておきたいと思います。それは、「選手の競技復帰を考えて治療してくれること」にあります。

 スポーツドクターは治療のゴールを先に設定します。プロスポーツ選手であれば、「いつまでに実戦に戻れるのか」がとても重要です。オフの期間、合宿や試合のスケジュールがある中で、スポーツドクターは選手の障害の状態を診て、いつ手術をして、どこでリハビリをして、どのタイミングで復帰するのか目標を定めて、どう治療するかを決定します。医学的な判断にもとづいてプランを提案し、選手自身やチームの要望を聞き、相談のうえで治療をおこなっていくのです。また、たとえば重量挙げ選手では筋力を落とさないことが重要になり、新体操の選手では柔軟性を保つ必要があるなど、競技特性を考えながら治療法を選択します。

 スポーツのことをよくわからないドクターの場合、「すべてやめなさい」になってしまうのだということがおわかりいただけたのではないかと思います。スポーツ障害が起きて、治療方針に疑問を感じたときには、ぜひ自身のスポーツを専門に診ているスポーツドクターを探して治療を受けにいってください。

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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