では専門的な知識をもったスポーツドクターであれば、どのような対応をするのでしょうか。まず、スポーツドクターは、早い炎症の時期に見つけることができれば、トレーナーなどと相談して、患者にフォームやトレーニング方法の改善などのアドバイスをして重症にならないようにします。スポーツの特性まで熟知しているため、症状を悪化させないためのからだの使い方、鍛えるべき部位やそのトレーニング法まで指導します。そして、一見同じような障害に対しても、それが休めば戻るものか、休んでも戻らないものかを的確に診断することができます。

 たとえばテニス肘も、初期の炎症だけの段階なら、炎症が治まるまでしばらくの間、肘の使い方を工夫したり、負担を減らすことなどによって痛みは治まります。しかし、骨と腱の付着部に細かい断裂が生じてしまうと、休んでもなかなか痛みが消えないでしょう。

 また、野球肘でも炎症だけの段階から進展すると、靱帯がはがれてしまったり、成長期の子どもでは軟骨の損傷が起こる「離断性骨軟骨炎」になっていたりする場合があります。そのように休んでも治らない段階にあれば、手術等、最も適切な治療を適時に勧めてくれるでしょう。

 とくに、子どものオーバーユースは注意が必要です。なぜなら成長期の子どもにスポーツ障害が起こると、骨の成長が止まってしまい元に戻らないこともあるからです。人それぞれに運動能力や体力は違うため、ひとくくりにどこまでやっていいかを言うのは難しいことです。スポーツドクターは、患者の局所の状態をみながら、個々に対応しているのが現状です。

 日本臨床スポーツ医学会では、子どもの野球障害の予防のための指針を発表しています。

●青少年の野球障害に対する提言

小学生
【練習日数と時間】週3日以内、1日2時間を超えない
【全力投球数】1日50球以内、試合を含め週200球以下

中学生
【練習日数と時間】週1日の休養、個々の力量に応じた練習量
【全力投球数】1日70球以内、週350球以下

高校生
【練習日数と時間】週1日の休養、個々の力量に応じた練習量
【全力投球数】1日100球以内、週500球以下

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治療のスタートは競技への復帰時期の設定から