自分を制御する力を強化するためには、大学の実験のように、ちょっとだけ「やらない力」と「やる力」を意識すればいいだけです。すると、その部分の脳が鍛えられて、自然と衝動的に行動しないようになっていくのです。

「やらない力」をつけるためには、Aチームのように、自分の癖に気をつけるだけでOKです。足を組まないように気をつける、間食をしない、利き手ではないほうを使ってみる、ハマっているスマホのゲームをしないようにしてみる、等々。

 勝手に手や足が動いてしまう直前に、一瞬だけ考える時間をとって「難しいほうを選ぶ」ことができるようになれば、大成功です。

「やる力」を鍛えるためには、Bチームのように、普段はしていないなにかを毎日継続するように気をつけます。私のように腹筋と背筋のトレーニングをしてもいいし、毎日決められた早い時間に寝てみる、床の拭き掃除をする、英単語を覚える、等々。

 また、そうした行為を記録して「自分はきちんとやっているのだ」と見えるようにしておくのも大切です。

 以前、アドバイスとして、何かを継続するためには、最初から大きな目標をたてないことが大切だと教わりました。いきなり「腹筋を毎日100回」と決めても、絶対に数日で嫌になるので、全く意味がありません。

 今回は、簡単なことでも継続することが目的なので、3回でも5回でも、小さなことでも「毎日する」という行為自体が大切なのです。

 育児をしていると、肉体も精神的も、「鍛えなくてはならない」と感じることが多くありますが、同時に「いつの間にか鍛えられているな」と思うときもよくあります。

 とにかく親は子どもに合わせて自分を制御する機会が多いので、私の脳も鍛えられたのでしょう、かなりの運動嫌いなはずなのですが、毎日腹筋と背筋をしようという目標が、既に3カ月も続いているのです。しかも、想像以上にあっさりと。

 腰回りの運動により、腰痛が気にならなくなったことで本当にラクになりました。その調子で、出産してからなかなかとれなくなったおなかの脂肪も、燃焼して消えてくれるとありがたいのですが。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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