地下鉄で運転を見合わせた区間はほとんどが地上に顔を出したところで、北千住駅・代々木上原駅・和光市駅は私鉄との接続駅で、地上駅である。また、丸ノ内線茗荷谷~本郷三丁目間と本郷三丁目~御茶ノ水間、三田線志村坂上~西高島平間が地上区間、東西線は東陽町駅の1つ西船橋駅寄りの南砂町駅から、新宿線は大島駅から高架線となり荒川・江戸川を渡る。

 鉄道では安全を守るため降水量や風力によって運転速度を下げる、あるいは運転そのものを停止するなど、細かく決められており、これらの区間は地上に延びる私鉄路線と変わりなく、中でも川を渡る橋梁上では風をさえぎるものがないため条件はさらに厳しい。

■情報の提供と冷静な行動が必要

 地下鉄は地中深く走っていることから、駅の出入り口やトンネル内に防水扉や止水板などを設け、万全の水害対策を講じている。今回の台風でもこれらが効果を発揮したことだろう。

 地上線が計画運休を行っている中、東京メトロ・都営地下鉄が本数を削減したとはいえ終車まで運行されていたことは、都市の交通を守る姿勢が見えて素晴らしい対応だったと思う。

 一方で、地下鉄が暴風雨に強かったことがわかったことで、台風が平日に上陸し地上線を走る私鉄が軒並み運休になったさいには、都心から脱出するため地下鉄に利用者が殺到する懸念もある。今後は鉄道事業者には運行に関するこまめな情報提供を、利用者には異常時に無理な行動をとらない冷静な姿勢が求められよう。(文/平賀尉哲)

○平賀尉哲(ひらが・やすのり)/1964年、徳島県生まれ、三重県育ち。鉄道雑誌の編集部に勤務し、2008年にフリーランスの編集者、ライターとして独立。「週刊JR/私鉄 全駅・全車両基地」(朝日新聞出版)、大手私鉄を各社ごとに取り上げて前面展望映像のDVDと詳しい車両紹介、歴史などを記した「完全データDVDBOOK」シリーズ(メディアックス)の企画・編集・執筆に携わる。車両に乗って旅をしているだけで幸せになる「乗り鉄」派である。スキューバダイビングの経験も長く、インストラクターの一歩手前までのライセンスを所有する。