台風19号に伴う計画運休で人々の姿が消えたJR新宿駅新南口(C)朝日新聞社
台風19号に伴う計画運休で人々の姿が消えたJR新宿駅新南口(C)朝日新聞社

 東京圏を直撃した台風19号に対し、地上を走るJRをはじめ私鉄各社は10月12日昼過ぎから順次、列車の運転を休止した。計画運休は列車の運転を強行し強風にあおられる、あるいは豪雨による土砂崩れで脱線するなどの事故を未然に防ぐための施策である。台風19号が上陸しそうだと判明してから計画運休の実施についてはテレビや新聞報道だけでなく、鉄道事業者のホームページや利用者向けのスマートフォンアプリで一斉に告知されたことは記憶に新しい。厳戒態勢の中、鉄道各社がさまざまな対応に追われた計画運休。今回は、東京都心を縦断する地下鉄の対策を振り返る。

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■計画運休への混乱は少なかった

 今回は12日が土曜日だったこともあり、2018年10月に関東地方を襲った台風24号のさいに実施した計画運休のような混乱は少なかった。いつもは利用者であふれている新宿駅の改札口に人ひとりも見当たらない映像をテレビニュースなどでご覧になった方も多いだろう。

 台風が過ぎ去った後、北陸新幹線の長野新幹線車両センターやJR武蔵小杉駅の浸水、JR両毛線・上田電鉄別所線での橋梁崩落、箱根登山鉄道線への土砂流入など、鉄道施設や車両への被害は大きいことが判明した。しかし、地上を走る列車は運転を見合わせていたため人的被害はなく、計画運休は効果を発揮したといえよう。

 台風が太平洋上へ抜けた13日には線路や施設を点検し、安全が確認できた路線から運転が開始され、列車は通常運転に戻っていった。

 ところが、12日夜には地上を走る鉄道が運休となっていた中、地下を走る鉄道は夜遅くまで運転されていた。

■夜になっても運転されていた地下鉄

 東京メトロ・都営地下鉄は大半の路線でJRや私鉄と直通運転を行っている。直通運転のメリットは都心と郊外を乗り換えなしで結ぶことで、デメリットはダイヤが乱れると直通先の路線に影響を与えることだ。直通運転先の地上線で運転見合わせが発生した際は、地下鉄に接続する駅で折り返し、地下鉄線内のダイヤはできるだけ平常に近づけるよう工夫している。

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10月12日、東京メトロの運転状況