―――国語で導入される、記述式問題についてはどのように受け止めていますか。

 2017年に行われた大学入学共通テストのプレテスト(平成29年度試行調査「国語」)を見て驚きました。国語の問題で資料、課題文を読ませて、80~120字で記述させる設問があります。こんな条件がつけられています。

<一文目は「確かに」という書き出しで、具体的な根拠を二点挙げて、部活動の終了時間の延長を提案することに対する基本的な立場を示すこと。二文目は「しかし」という書き出しで、部活動の終了時間を延長するという提案がどのように判断される可能性があるか、具体的な根拠と併せて示すこと。(筆者注:課題文は、架空の学校の部活動について)>

 設問条件をガチガチに固めておいて、与えられた文章、資料から必要な情報、キーワードを抜き出せるように誘導して、採点するわけです。これのどこが思考力を問う問題なのでしょうか。文科省は資料を読み取り、読解力を試すと言っていますが、しょせん、ことばの抜き出しにすぎません。このプレテストを見て、ある国語教師は「全文を読まず、斜め読みでも解答できる」と指導しているぐらいです。センター試験の選択問題を記述式にしただけの問題であり、採点はこちらのほうがかえって難しくなります。

―――数学の記述式問題はどうでしょう。

 プレテストでは、数学的な処理について、書かせるものがありました(平成30年度試行調査「数学I・数学A」)。

<…………階段の傾斜をちょうど33°とするとき、蹴上げを18センチメートル以下にするためには、踏面をどのような範囲に設定すればよいか。踏面をxセンチメートルとして、xのとり得る値の範囲を求めるための不等式を、33°の三角比とxを用いて表せ。解答は解答欄(い)に記述せよ。>

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