また、全国のがん診療連携拠点病院には「がん相談支援センター」が設置されており、だれでも相談できます。自分の病院だけでなく、他の病院にかかっている患者さんでも無料で相談可能です。

 もう一つ、覚えておいたほうがいい窓口として公益財団法人・日本対がん協会(以下、対がん協会)があります。

 対がん協会は1958年に設立され、2018年に60周年を迎えた組織です。もともとは、がんの検診、啓発をメインに活動をおこなってきました。現在は、「がん予防・検診の推進」「正しい知識の普及・啓発」「がん患者・家族の支援」を3本柱で活動をおこなっています。

 2006年に「がん相談ホットライン」を設置し、患者さんやご家族の方など、誰でも相談できる無料電話相談がスタートしました。経験豊富な看護師、社会福祉士の方たちが年間約1万件の相談を受けています。

 相談内容は、症状・副作用・後遺症のことから、不安、治療、人間関係、そして経済的な問題まで幅広く応対しています。

 先日、対がん協会の相談員である北見知美さんに直接お話を聞きました。

「(がん患者さんの)相談の窓口があること自体を知らない方が多いです」

 お恥ずかしいことに、私自身も今回の取材で対がん協会に足を運ぶまで、相談窓口の存在を知りませんでした。

 さっそく私は気になっていることを聞きました。医者とのコミュニケーションにおける患者さんの悩みです。

「いつもならチクッてするくらいで済む言葉でも、がんの患者さんにはグサッときます」

 優しい語り口で北見さんは、私たち医者にとって耳の痛い現実を語ってくれました。

「普段気さくに話してくれる先生が、今日は顔を見て話してくれなかった。その態度に、見放されちゃったんじゃないか、と不安に感じる患者さんがいます」

 診察室では聞くことができない患者さんの訴えに私は申し訳ない気持ちになりました。

「カルテを打つためにパソコンに向き合う先生を見て『先生は自分の話なんてどうでもいいんだ』と。そうおっしゃる患者さんもいます」

 言葉ひとつひとつがとても重いものでした。

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