肩腱板は加齢とともに組織が変性してもろくなるため、40~50歳くらいから切れやすくなります。筋肉は鍛えられても、腱板を鍛えることはできないため、スポーツをする際にはいかに腱板にかかる負担を軽減できるかが予防の鍵となると、西中医師は話します。

「強く腕を振る動作を、腕だけでおこなっていると肩関節には大きな力がかかります。からだ全体を使い、体重を移動させながらしっかりとからだを回転し、最後に腕を振ることが負担軽減のポイントです。そのような動きができるように、普段からからだを柔軟にし、バランス感覚と筋力を高めるトレーニングをしましょう」

 また、肩関節の動きをよくすることを心がけることも大切です。

「姿勢が悪く背だと、肩関節がスムーズに動かず、上腕骨頭と肩甲骨の肩峰の間にはさまれている腱板が通り抜けるときに摩擦が起こり、断裂のリスクが高まります。正しい姿勢を保つことで、肩の痛みが出にくいからだを維持することができます」(西中医師)

【スポーツクラブでひざを痛める●65歳男性】

 元会社員の千葉県船橋市在住の山本敏雄さん(仮名・65歳)は、定年後とくに運動をしない生活をしていました。しかし、歩行や立ち上がるときにひざの痛みを感じるようになり、近くの整形外科を訪れました。X線検査により軽度の変形性膝関節症と診断され、消炎鎮痛薬の湿布を処方されました。医師から筋力の低下を指摘され、「歩けなくなったら大変」と思った山本さんは、スポーツクラブへ入会して、さっそく自分で筋力トレーニングを始めました。

 とくにひざを鍛えたかった山本さんは、レッグエクステンションという、足に重りをつけて曲げ伸ばしをくり返すトレーニングを一生懸命したところ、2週間後にひざの痛みがかえって強くなってしまいました。心配になった山本さんは専門医の治療を受けたいと考え、船橋整形外科病院の土屋明弘医師のもとを受診しました。土屋医師は次のように説明しました。

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自己流の筋トレは症状を悪化させる?