これはなぜか。ここまで見てきたように、これだけ地域社会が弱体化して、自営業が減ってくれば、町内会、商店会、自治会が高齢化・衰弱化して機能しなくなるのは当然のことです。また2005年に郵便局を民営化したとき、自民党の党員がごっそり減っています。つまり旧来型の日本のシステムの基盤と、自民党員の多い部分は、ほぼイコールと言えます。そこが衰弱すると自民党も衰弱する。

 それでも自民党が選挙に勝ち続けているのは、棄権する人が増大しているのが大きな一因でしょう。1999年に公明党と連合して以降、自民党は公明党の協力と、野党の分裂、棄権の多さのために援けられています。

 2000年代以降、自公合わせて約3割の固定的に得票しています。より正確に言うと、日本の有権者は2000年代以降、約1億人で定常的です。人口はあまり変わっていないから約1億人で、わかりやすいですね。そして自公合わせて、2000年以降のどの国政選挙も、ほぼ2600万から2700万票を獲得しています。2005年のいわゆる「郵政選挙」は例外ですが、あとはどんな事件や議員の失言があってもほとんど変わりません。おおざっぱに言って、有権者の約3割です。

 一方で、いわゆるリベラル系の政党を全部足して、約2000万票というのも2012年以降はほぼ変わりません。民主党が立憲民主党と国民民主党に分裂したり、れいわ新選組ができたりといろいろありますが、それらと社民党・共産党などを足した得票はほぼ2000万です。これは全有権者の約2割です。

 この状態で、投票率が50%であれば、5割棄権・3割自公・2割リベラル系となります。この構図のままだと、基本的に自公は安泰です。2012年以降の国政選挙は、すべて投票率は50%台以下です。なお、維新とか「みんな」とかN国とかは、選挙によって波がありますが、おおむね全部足して300万から800万くらいの得票数です。

 2009年に民主党が勝ったときは、投票率が70%まで上がり、野党が選挙協力をしました。こうなると、棄権3割・自公3割・野党4割となって、民主党を中心とした政権ができた。でもこれは、投票率が7割に上がらないと難しい。投票率が5割では不可能です。

 では自民党が強いのかというと、総得票数は伸びていません。旧来型の基盤、つまり自営業が減って地域社会が不安定化しているのですから、増える理由が見当たらない。しかし、棄権が多いうえに、野党が分裂して2000万の中で食い合っている状態なので、少ない票数でも勝っている。

 なお若い人に自民支持が多いという話もありますが、あれは自民支持が多いというより、「支持政党なし」が多くて野党支持が少ないというほうが正確です。たとえば支持政党なしが6割、自民支持が3割、野党支持が1割なら、「政党支持のなかでは自民が75%」という数字になる。そもそも若い人は投票率が低いので、全投票数のなかでみれば、自民支持が多少比率的に多くともあまり全体の押し上げになっていない。

次のページ
どうしたら投票率が上がるのか?