大卒求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移(提供/リクルートワークス研究所)
大卒求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移(提供/リクルートワークス研究所)
現行の主な採用スケジュールと複線化・多様化のイメージ
現行の主な採用スケジュールと複線化・多様化のイメージ

 年度によって時期こそ異なるが、ダークスーツを着た初々しい若者たちの会社回りは風物詩となってきた。近年では3月に会社説明会、6月に選考を解禁。この「新卒一括採用」が見直されることになった。なくなるわけでは決してないが、企業の採用形態が複線化・多様化していくことは間違いないようだ。好評発売中のアエラムック『就職力で選ぶ大学2020』では、今後どうなっていくかを専門家に取材した。

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 2018年10月に日本経済団体連合会(以下、経団連)は、新卒予定者の「採用選考に関する指針」を21年春入社から廃止すると発表。大学や学生に大きな衝撃を与えた。経団連は1997年に「新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章」を策定し、新卒採用時期を管理してきた。罰則のない紳士協定だが、目安として経団連非加盟の企業も参考にしており、それが廃止されれば、新卒予定者の就活は大混乱になりかねないからだ。

 政府が企業側への要請を継続し、22年春に入社する今の大学2年生にも現行日程を維持する方向で調整するとしているのだが、その先は不透明。「経団連が採用の日程について采配すること自体には極めて違和感がある」と中西宏明会長が語ったように、グローバル化が急速に進む中で日本的な横並び一括採用がそろそろ限界と判断されているからだ。このため、経団連は手を引くだけでなく、大学と継続的な対話を行っていく「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」を発足。19年4月に「中間とりまとめと共同提言」を公表した。

「『通年採用になって就活ルールがなくなる』といった誤解が生じています」と話すのは、この協議会の大学側座長である山口宏樹さん(就職問題懇談会座長、埼玉大学学長)だ。「『中間とりまとめ』には通年採用とは一言も書いていません。新卒一括採用(メンバーシップ型採用)に、学生の専門能力を判断して採用する『ジョブ型採用』などが加わる複線化・多様化を想定しているのですが、学業に影響する早期化・多様化は避けたい。そこでジョブ型の採用を通年で行うとすれば卒業後が望ましいといったルールが必要になります」

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卒業前だけでなく卒業後の採用も?