就職情報サービスを提供する学情は“20代専門”の転職サイト『Re就活』のCMに神木隆之介を起用し「世代も働き方も生き方も違うのに、どうして僕たちはひとくくりにされているんだろう」と若者の気持ちを代弁して共感を誘った。会社に働き方を決められるのではなく、自分らしいスタイルで働くことを追求する価値観が台頭してきたことがうかがえる。

 ビジネスパーソンをターゲットとする缶コーヒーブランドでも同様の傾向が見られた。2017年4月にサントリー食品インターナショナルから発売されたペットボトル入りのコーヒー『クラフトボス』は年々増加しているIT従事者を想定して開発された商品で、CMでも時間や場所に縛られない“新しい働き方”を描いた。オフィスに出社せず好きな場所で働き、堂々と有給休暇を取り、競い合うことを好まないといった若者の価値観に、“古いタイプ”の社員を演じる堺雅人が面食らうという内容で、時代の変化を軽妙に切り取って好評を得ている。

 アサヒ飲料の『ワンダ』は、会社員役の劇団ひとりが部長役のビートたけしに「朝からキビキビ働いて早く帰るんです」とアピールするCMを2018年4月にオンエアした。4本の手で2人分の仕事をこなしているように見えるが実は後ろに同僚役の澤部佑がいただけで、「ちゃんと働けよ」とあきれられてしまうストーリー。「人生楽しんだモン勝ちだ!」とコピーがかかり、仕事もプライベートも前向きに頑張るビジネスマンを応援した。

■西川貴教が頑張るサラリーマンを応援

 2018年後半以降は、以前とは切り口が異なり、働く喜びややりがいをあらためて問うCMも続々と誕生している。「働き方改革」というフレーズや意識がだいぶ浸透した一方、業務時間の短縮が目的にすり替わっている風潮や、仕事が残っているのに残業せずに帰ってしまうような“勘違いワークライフバランス”といわれる現象を戒めているかのようだ。

 エステー『消臭力』のCMではサラリーマン役の西川貴教が、楽しみながらも必死に働く様子をつないだ映像に「♪ガムシャラに働くのは 素晴らしいなんて 言っちゃダメなのか」というオリジナルソングを乗せて展開した。多様な働き方を模索する現代だからこそ、一生懸命に働くことが悪いことであるかのように評される空気をポジティブに変えていきたいという思いをコミカルに表現している。

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山田孝之の職業人を演じるシリーズ