大原麗子「なが~く愛して」から井川遥まで「お酒と恋」のCM史 (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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大原麗子「なが~く愛して」から井川遥まで「お酒と恋」のCM史

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サントリー『角瓶』妹編(提供/サントリーホールディングス株式会社)

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チョーヤ『The CHOYA』最高の幸せ編(提供/チョーヤ梅酒株式会社)

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■井川遥に「一杯付き合ってください

 直近では『角瓶』の新CMがなんともくすぐったくてよい。小雪、菅野美穂に続き井川遥が3代目バーのママを務めるシリーズは2014年にスタートし、当初から常連客である加瀬亮との絶妙な距離感に恋の行方が気になる視聴者も多かっただろう。他の来店客とカウンターに並んで座りつつもまっすぐに井川を見つめ「一杯付き合ってください」と真顔で誘ったり、井川に見惚れる客の視界をジョッキで遮ったりと、分かりやすすぎる加瀬の態度が微笑ましい。そうした展開を経て放送された『角ハイボール缶』のCMは加瀬が自宅の冷蔵庫から缶の商品を取り出して飲むというもの。ハイボール缶のCMは大抵手軽さやきちんとウイスキー本来の味がすることを訴求するのがお決まりとなっているが、このCMでは缶を手にした瞬間、井川の笑顔がインサートされる。「何考えてんだ、俺」とつぶやき思いを振り払うように角ハイボールを流し込む加瀬の姿に「あの店の味がする」というコピーがかかる。

 仕事柄多くのCMを目にするが、初めてこのCMを見た時は驚きのあまり声が出た。さまざまなことに思いを巡らしふと「自分が“サトラレ”だったら恥ずかしいな…」と思うことがあるのだが、まさに他人の脳内を覗き見してしまった気分になり、罪悪感の反面深い共感を覚えた。普段社会の中に身を置いている時は、他人には見えないはずの脳内にもブレーキをかけ無意識的に思考を抑制している分、人目を気にせずにひとり自宅で酒を飲むとなると、CMの加瀬同様に思念が解放されてしまう感覚を味わう。あの水門が開く感じがこのCMを見ると瞬間的によみがえり「そう、お酒ってそういう時に隣にあってほしい!」と改めて思ったりする。

 5月末からオンエアされている新作には、加瀬亮の妹役として木南晴夏が登場する。きっと少し年齢の離れた兄妹で、どこか頼りない兄の後をついて回ってあれこれ世話を焼くようなタイプなのだろう。兄が想いを寄せる“遥ママ”をまるで品定めするかのような目で無遠慮に見つめているが、突然「兄貴、あなたに恋してるらしいんです」と当人同士を目の前に打ち明ける。加瀬は動揺し目を泳がせるが、井川は余裕の笑みで「あなたもお兄さんのこと、大好きなのね」と返す。サラリとかわされた木南は相手の方が一枚上と悟り、一瞬すねたように頬を膨らませるのだが、出演者全員の視線の交錯がもう本当に素晴らしい。「目は口ほどにものを言う」とはまさにこのことかと思うほど、目の演技でストーリーを展開させている。『角瓶』の紹介は一切ないが、自分もその場にいて「私もハイボールおかわり!」と言いたくなるような、素敵な酔い心地を感じさせる名CMだと思う。


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