大阪桐蔭・西谷監督 (c)朝日新聞社
大阪桐蔭・西谷監督 (c)朝日新聞社

 現在の高校野球界の王者と言えば、間違いなく大阪桐蔭になるだろう。2008年以降、春3回、夏4回の甲子園優勝を果たし、昨年は史上初となる二度目の春夏連覇を達成。チームを指揮する西谷浩一監督の甲子園通算55勝は現役1位であり、勝率.859はPL学園の黄金時代を築いた中村順司を上回り、現時点で歴代1位となっている。

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 そんな大阪桐蔭だが、昨年秋以降は苦しい戦いが続いている。秋の大阪府大会では決勝で履正社に敗れて準優勝。続く近畿大会では初戦こそコールド勝ちしたものの、準々決勝で智弁和歌山に敗れ、選抜の選考でも落選。史上初となる3季連続甲子園優勝の夢は儚く散った。この春もチームとしての状態はなかなか上がらず、大阪府大会の5回戦で近大付を相手に1対6で完敗。6月8日に行われた岡山県での招待試合では玉野光南を相手に0対10と大敗を喫している。この試合は主戦投手が投げなかったということもあるが、招待試合とはいえ、これだけの点差で大阪桐蔭が敗れるということはショッキングな出来事である。

 では、なぜ現在の大阪桐蔭がここまで苦しんでいるのだろうか。一つは昨年夏の甲子園で最後まで戦い、新チームの立ち上げが遅れたということが大きい。過去10年間の夏の甲子園優勝校を見ても、翌年春の選抜大会出場を果たしているのは4チームであり(2010年の中京大中京、2013年と2015年の大阪桐蔭、2017年の作新学院)、チーム作りの遅れが大きく影響していることがよく分かる。

 さらに昨年の大阪桐蔭は根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、中川卓也(早稲田大)など多くの選手が下級生から中心としてプレーしており、夏の甲子園でベンチ入りしていた2年生はわずかに二人。公式戦に出場経験のあるメンバーはほとんどいないという状態でのスタートだったのだ。

 2012年にも春夏連覇を達成しているが、その時には森友哉(西武)が下級生ながら完全に主力となっており、笠松悠哉(ヤマハ)、水谷友生也(明治安田生命)なども度々試合に出場して存在感を見せていた。その時と比べても今のチームは圧倒的に経験不足ということは否めないだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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