しかし、現在のチームも選手の能力が決して低いわけではない。早くから話題となっているのが新チーム発足当時から打線の中心を担っている西野力矢(一塁手)、船曳烈士(右翼手)の2年生コンビである。西野はたくましい体格のパワーヒッターで少し粗さはあるものの、パワフルなスイングは迫力十分。差し込まれても押し込んで外野まで運べるパワーは高校生では上位だ。船曳も小柄ながら鋭いスイングで長打力は申し分ない。巧みなリストワークが持ち味で、広角に長打を放つことができるのも魅力だ。

 そして、チームの中心となるのは昨年夏の甲子園でベンチ入りを果たした宮本涼太(二塁手)と中野波来(中堅手)の二人だ。宮本は三拍子揃ったリードオフマンタイプ。プレーのスピードは高校生トップクラスで、この春は力強さもアップしてきた。中野はセンターから見せる強肩とパワフルな打撃が持ち味。確実性は課題で下位を打つことが多いが、とらえた時の打球の速さが目立つ。彼ら二人が上手くチャンスを作ることができれば、得点力は大きく改善するだろう。投手陣は中田唯斗、新井雅之の3年生二人が主戦となる。いずれも絶対的なスピードがあるわけではないだけに、どれだけ粘り強く投げられるかがポイントだ。

 今年の大阪は選抜に出場した履正社が総合力で頭一つ抜けており、好投手を擁する大商大高が続く展開で、勝ち抜くのは決して簡単ではない。しかし、大阪桐蔭はかつても2007年の中田翔日本ハム)が抜けた後の2008年、2012年の春夏連覇、2013年の森がいた代の後の2014年と絶対的なスターが抜けた後の学年でも夏の甲子園優勝を果たしている。今年も大阪大会を勝ち進みながら力をつけていけば、その再現も決して不可能ではない。

 2004年、2005年の駒大苫小牧以来となる夏連覇へ。大阪桐蔭の戦いは7月15日、東淀川戦からスタートする。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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