「ミスターニコン」後藤哲朗さんが語る “あの名機”の開発秘話

アサヒカメラ

2019/06/20 08:00

――D4からは担当されていない。

後藤:それからは社内の小じゅうと役を務めていましたから。それでも、試作品が披露されるとちゃんとバグを見つけますよ。「おいおい、なんでこんなレベルなのかい?」って。

――09年には後藤研究室ができ、Dfが開発されます。

後藤:カメラの操作性はメーカーが違っても多くは皆同じになって、つまらないですよね。カメラは趣味嗜好品ですから便利さの追求でなくてもいいでしょう。そこでDfを企画しました。

――Dfでは、F5でなくなったシャッターダイヤルが復活しました。コマンドダイヤルでも設定できますね、普通のデジタル一眼レフみたいに。だから好きなほうを選べる。

後藤:機構も回路もそれまでのカメラに比べれば複雑になりました。ただダイヤルについては、ベアリングなどの設計がもっとうまければ感触が上がったと残念に思います。今ではそのような設計ができるか、作れるか……お金もかけられないでしょうし。

――Ai連動ピンの跳ね上げもできるから古いニッコールオートのレンズも装着できる。

後藤:多くのニコンファンがいまだに大事に持っているレンズも使えるようにと。現行のニコンデジタル一眼レフでは唯一です。

――古いレンズが使えるのはニコン独自のものというか、優位性というか。ただ、装着できないレンズがあると、誰が責任とるんだということになりかねない。

後藤:メーカーは安全第一を考えますからね。いまのZ 6とZ 7はフランジバックが16ミリ。マウントアダプターをもっと生かせればいいと思うのですが。

――もうDfは5年以上になりますね。他のメーカーにはできない製品でもあります。

後藤:一方で、たくさん売れるカメラではないと思っていましたし、実際に(数字的に)成功したカメラではありません。

――それは発表会のときにも後藤さんが話してましたけど、もう一声って感じで。いまカメラ業界はあまり景気のよい状況ではありませんが、どうしたらいいでしょう。

後藤:どうしましょうかねえ。ニコンは昔からカメラ(やレンズ)で会社を養っている、数少ないメーカーです。そんな立ち位置から、失敗が許されない事情を考えながら、しかも他のメーカーとは異なる機材を提供しなくてはなりませんね。

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これからのニコン、これからの後藤哲朗

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