※写真はイメージです(写真/getty images)
※写真はイメージです(写真/getty images)

 画像検査の結果で医師から「脳が萎縮している」と言われたら、多くの人が不安になることでしょう。それは認知症を意味する診断結果なのでしょうか? 千葉大学病院精神神経科特任助教の大石賢吾医師が、自身の診療経験をもとに、相談に答えます。

【60代男性Aさんからの相談】先日、息子たちの勧めで人間ドックに行きました。その時の頭の画像検査で「脳が少し萎縮していますね」と言われたのですが、認知症ということなのでしょうか? 自分の父も認知症だったのですが、父の病気が見つかったときの年齢に近づいてきて「自分も認知症になるんじゃないか」と心配になっています。

*  *  *

 一念発起して受けてみようと決心したものの、実際健診となると「何かあるのでは……」と心配になってしまいますよね。そこで何か指摘されたら「やっぱり!」と嫌な予感が的中したような気分になってしまうことと思います。特にAさんは、実のお父様が認知症になられたとのことで、心配は人一倍でしょう。

 しかしながら、率直にいうと脳の萎縮だけでは認知症と判断することはできません。ただし、萎縮と認知症が無関係であるというわけでもないのです。少しややこしく感じるかもしれませんが、今回は代表的な認知症にも触れながら脳の萎縮と認知症の関係についてご紹介し、Aさんのご相談にお答えしたいと思います。

 まず、“認知症”という言葉の意味を整理しておきたいと思います。実は、一言で認知症といっても厳密には一つの病気のことを意味するものではありません。一般的には「認知症=もの忘れ」といったイメージがありますが、ここでいう“認知”は単に物事を記憶する力を意味するものではないのです。

 認知には、記憶をする以外にも起こった出来事を理解したり、それに対してどう反応するべきか判断したり、物事を段取りよく進めたりと、さまざまな機能が含まれます。一般的に用いられている認知症は、このような日常生活を送るにあたって必要な機能がうまくいかなくなってしまった状態のことを意味しています。また、認知症と言っても原因や症状の特徴からいろんな種類があることが知られています。代表的なものでは、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭葉側頭葉型認知症、脳血管性認知症などがありますが、皆さんもいくつかは耳にしたことがあるのではないでしょうか。

著者プロフィールを見る
大石賢吾

大石賢吾

大石賢吾(おおいし・けんご)/1982年生まれ。長崎県出身。医師・医学博士。カリフォルニア大学分子生物学卒業・千葉大学医学部卒業を経て、現在千葉大学精神神経科特任助教・同大学病院産業医。学会の委員会等で活躍する一方、地域のクリニックでも診療に従事。患者が抱える問題によって家族も困っているケースを多く経験。とくに注目度の高い「認知症」「発達障害」を中心に、相談に答える形でコラムを執筆中。趣味はラグビー。Twitterは@OishiKengo

大石賢吾の記事一覧はこちら
次のページ
加齢だけじゃない! 脳の萎縮を進める要因