最後に気が早いが今大会で目立った来年の候補を3人紹介したい。まず投手では中森俊介(明石商・2年)を語らないわけにはいかないだろう。昨年夏の甲子園でもリリーフで145キロをマークして注目を集めたが、今大会はエースとして見事なピッチングを見せてチームをベスト4に導いた。無駄な動きがなく、左肩の開かない完成されたフォームから繰り出すストレートは最速147キロをマークし、多彩な変化球も操るピッチングはとても下級生とは思えない。順調に成長すれば来年の上位候補になるだろう。中森とともに1年春からレギュラーとして活躍している来田涼斗(明石商・2年)も準々決勝の智弁和歌山戦で先頭打者ホームランとサヨナラホームランを放つ離れ業を見せて一躍スターダムにのし上がった。ミート力と脚力は昨年から目立っていたが、この冬で一回り体が大きくなり、パワーも確実にアップした。確実性と長打力を兼ね備えた万能タイプの外野手として、今後も更に注目を集めていくだろう。最後の一人は小深田大地(履正社・2年)。初戦で星稜に敗れたものの、たくましい体格を生かしたフルスイングでスタンドを沸かせ、最終回には奥川からライト前にクリーンヒットを放って見せた。先輩である安田尚憲(ロッテ)を一回り小さくしたようなタイプだが、その長打力は高校生ではトップレベルと言えるだろう。

 冒頭にも触れたように奥川一人が少し抜けていた大会だったが、高校生は驚くようなスピードで成長することも珍しくない。夏に向けて、今大会では目立たなかった選手、またまだ全国的にも名の知られていないような新星が続々とドラフト戦線に浮上してくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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