私自身、体力的にも精神的にもかなりクタクタ。いつ何が起きるかわからないので、常に気が張っています。たとえば野上が熱を出したとき、すぐ病院にいくべきなのか自宅で安静にしていていいものなのか、私にはわからない。血を吐いたときにはさすがにすぐ救急車を呼びましたけど、熱だと見極めが難しいことがあります。私が判断をまちがうと命にかかわるかもしれないと、責任の重大さに押しつぶされそうになります。

 また、野上の体調が悪いとき、同じ空間にいると私まで気が滅入ることも。冷蔵庫のにおいとか足音とかにも過敏に反応してしまうようで、私は息を潜めて生活することになりますが、そばに付き添ってはいたいんです。

 精神的にぎりぎりの状態になると、私は一人で2階に行き、大声を出してハアッと気合いを入れます。「なりたくて病気になったわけじゃない」と自分に言い聞かせながら。野上が不機嫌になったりふさぎ込んだりするのは、本人が悪いからじゃない。そう考えると、私の気持ちも落ち着きます。体調が戻れば、不機嫌だったことのフォローをしてくれるのもわかっていますしね。本人がそうしたかったからではなく、体調が悪かったから。それだけなんです。

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野上祐

野上祐

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた2016年1月、がんの疑いを指摘され、翌月手術。現在は闘病中

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