「僕たちはシャイ、カラー・ミー・バッド、ボーイズIIメンなどコーラス主体のグループにあこがれてデビューした。にもかかわらず、アカペラナンバーがない。そのことはずっと気になっていたんだよ」(ハウイー・D/以下・ハウイー)

 そんなアカペラナンバーの「ブリーズ」をはじめ、『DNA』はバリエーションが豊かだ。

「『ドント・ゴー・ブレイキング・マイ・ハート』はダンスナンバー、『ノー・プレイス』はナッシュビルのイメージのカントリー、『ニュー・ラヴ』はセクシーなクラブサウンド……。僕たちのあらゆる音楽的側面を反映できたと思っているよ。どの曲もラヴソングだけど、かつては男女の恋愛を歌っているナンバーが多かった。でも、年齢を重ね、キャリアを重ねてつくった『DNA』ではより大人の“LOVE”を歌っている。ファミリーへのLOVEだったり、ファンへのLOVEだったり」(AJ)

 結成から25年、バックストリート・ボーイズはいよいよ脂がのってきている。しかし、ここまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。『ミレニアム』『ブラック&ブルー』のワールドツアーの後も休暇をとらずに活動をつづけたことは、メンバーの体にも、心にも、大きなダメージを与えた。ブライアンは心臓を患って手術を行い、さらに筋緊張性発声障害に苦しんだ。AJは薬物に依存し、そこから抜けるための戦いを続けた。彼らを発掘して育てたマネージャーを詐欺と窃盗で訴えもした。そんな過程で、ケヴィンは1度脱退している。

「僕自身がバックストリート・ボーイズに情熱を持てなくなっていたんだ。それを隠して活動を続けるのはバックストリート・ボーイズに対しても、ファンに対してもフェアではない。だから、抜けさせてもらった。でも、抜けたからこそ、バックストリート・ボーイズの価値が再認識できた。戻った今は、かつてよりも責任を感じて歌っているよ」(ケヴィン)

 こうしたバックストリート・ボーイズの混迷期は2015年公開のドキュメンタリー映画『BACKSTREET BOYS:SHOW’EM WHAT YOU’RE MADE OF』にもリアルに描かれている。ニックが発声障害を隠すブライアンをののしる場面まで、ありのまま映している。

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