「自分たちの真実をファンにオープンに伝えたいと思っているんだ」(ケヴィン)

「いいことも、醜いことも、僕たちはすべてさらそうと決めた。AJが薬物に依存してリハビリ施設に入ったことも、ケヴィンの両親との不和もね。プライベートを隠さず、メディアが気づくよりも先に自分たちから伝えることによって、ファンのみんなも僕たちをリスペクトしてくれると感じている」(ハウイー)

 ドキュメンタリーの中で、5人のメンバーはそろって、それぞれの故郷を訪ねる。ブライアンとケヴィンはケンタッキー州レキシントン出身、AJはフロリダ州ウェストパームビーチ、ニックはニューヨーク州ジェームズタウン、ハウイーはフロリダ州オーランド。それぞれ自然豊かな郊外の街だ。彼らは育った家を訪ね、学校を訪ねる。懐かしさに涙を流すメンバーもいれば、苦しかった親子関係がよみがえり涙を流すメンバーもいた。

「ケヴィンが戻り、これからもう1回頑張る上で自分たちのホームタウン、原点を見る必要があった。それに、故郷に戻りたかったんだよ。その姿を映像を通してファンにも見せたかったし、メンバーにホームタウンを見せることで、それぞれどんな場所から出発したのかを理解し合いたかった。あの旅によって、グループとしての結束力がより強くなったと思う」(ハウイー)

「僕たちは5人とも都会で生まれ育ってはいない。この事実は、バックスにとってとても重要だと思う。スモールタウンで生まれたからこそ、中産階級の家庭で育ったからこそのメンタリティが、今の音楽活動に強く作用していると思う。僕たちは幼いころから、何かを与えられて育ってきてはいない。自分の手で常に何かを獲得してこなくてはいけなかった。それがキャリアをつくってきたと思っているよ」(ケヴィン)

(神舘和典)

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神舘和典

神舘和典

1962年東京生まれ。音楽ライター。ジャズ、ロック、Jポップからクラシックまでクラシックまで膨大な数のアーティストをインタビューしてきた。『新書で入門ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。「文春トークライヴ」(文藝春秋)をはじめ音楽イベントのMCも行う。

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