森上さんが豊島岡とともに「勝ち組」女子校に挙げたのが、東京の鴎友学園女子と吉祥女子、そして神奈川の洗足学園だ。

 豊島岡と合わせて“新御三家”とされる鴎友と吉祥の躍進理由を、森上さんは「25年から30年かけて改革したリニューアル校。高校入試ではどちらも偏差値40くらいだったが、少子化が進む中でハイレベルな中高一貫にしないと生き残れないということで、中学に力を入れてイメージを一新した」と語る。

 そして、今や桜蔭を狙う子の併願校となった洗足学園は、立地も追い風に、神奈川の女子校トップに君臨してきたフェリス女学院に並ぶ難関校になった。「田園都市線沿線(溝の口)で横浜都民がたくさんおり、上昇志向の強い親が多い地域。当時の校長先生が『神奈川北部のフェリスにするんだ』と言うとみんな笑っていたけど、本当にそうなった」(森上さん)

 ここに挙げた学校にも共通するものがある。帰国子女の積極的な受け入れだ。

 森上さんは、「帰国子女は伝統校が嫌がった。異文化なので学校の色に染めるのに時間がかかる。そこを共生しようとしたのが渋幕、渋渋、そして洗足と鴎友。帰国生が多いことで英語のモチベーションがすごく上がる。大学受験は英語が決め手。女子校は早慶など私大で実績を出し、それができたら国立、理系、医学部に力を入れて進学校にしていった」と、柔軟な方針が奏功したとみる。

 進学実績が人気に直結するのは仕方ないとはいえ、大手塾スタッフは、それ以外の魅力もあると話す。「吉祥はバランスが取れていて、芸術系に進学する生徒も多い。色んな可能性を広げて伸ばしてくれる。洗足も音楽に力を入れていて、人気にはそうした理由もあるのでは」

 新たな女子進学校が台頭する中で、森上さんが「大苦戦」と指摘するのがカトリック系の女子校だ。いわゆるお嬢様学校は厳格な校則で知られ、「カトリックの良さではなく大学進学にばかり目がいくようになってしまった。いい学校でありながら、厳しいゆえに楽しさを訴えられていない」と残念がる。

 厳しさが好まれないのは男子校も同じ。パワハラやブラック校則が世間を騒がせるご時世ゆえ、日々受験生と接している進学塾のベテランスタッフも、こう明かす。

「こういう時代なので本郷や成城、海城のような自由で男子校を謳歌できる学校が好まれて、校則が厳しいところは敬遠されがち」

 校風で明暗を分けたのが、男子校“新御三家”とされる海城(東京)と巣鴨(東京)だ。以前はほぼ並んでいたが今では両校の難易度には開きがある。

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