医学部予備校ビッグバンの小論文・面接主任の芝高太郎さんは、多浪生の面接についてこう話す。

「面接官から『多浪した理由』を聞かれた時、『現役のときは~~。1浪目は~~。2浪目は~~。試験のときにはケアレスミスをしてしまい~~』などと具体的な説明に終始する多浪生が多いのですが、面接官はそんな言い訳がましいことを詳しく聞きたいわけではありません。もちろん多浪したことを責めているわけでもありません。自分が多浪せざるを得なかった理由を冷静に分析できているか、そしてそれが自分の努力不足によるものなら、そのことを謙虚に受け止めているかを確認したいだけなのです」

 潔くどのように改めたかや、入学後に勉強を頑張る決意などを伝えることのほうが大切と芝さんは言い、こう続ける。

「次々と発覚した医学部の入試不正、その中でも多浪差別から、多浪生に対する質問が厳しいものになるのではないかと危惧している受験生も多いかもしれませんが、述べたように謙虚さを示すことができれば、心配は不要です」

 多浪生が敬遠されるのは、年齢が若い方が医師として長く働けるという理由もあるだろう。しかし、同じように年齢を重ねているのに、「再受験生」はむしろ好まれるという。予備校関係者が、その理由を説明する。

「他学部卒業後や、社会人になったあとに受験する再受験生は、医師を志した明確な理由や『医師になりたい』という強い思いがあります。入学後に真面目に勉強し、模範生になることが多いため、大学側も期待しているようです」

 昨年もNHKの女性アナウンサーが医師を目指すために退局し、話題になった。再受験生が勉強に真摯に取り組む姿勢や生活態度は、同級生の目標になることが多いし、社会経験がある学生は、多様性という意味でも歓迎されるのだろう。

■成績が良くて医学部合格 でも「医学」に興味なし

 今までに取材した多くの医学部教授が異口同音に話すのが、「入学時の成績と卒業時の成績に相関関係はない」ということだ。「成績がいいから」という理由だけで進学し、医学の勉強に興味を持てないと、成績が低迷して留年する学生もいる。ある難関医学部の教授も嘆き節だ。

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面接がないのは九大だけ