「思うように相撲が取れないことについて、ケガを理由にしたような話は聞いたことがない。『力が足りません』と言葉少なに語るばかりだった。実際、すごい重圧の中でよくやったと思う。本当にご苦労さまと言ってやりたい」(同)

 稀勢の里が引退会見で語った「一片の悔いもない」という言葉は、漫画「北斗の拳」の登場人物であるラオウが、ケンシロウに敗れた時に語った最後のセリフ「我が生涯に一片の悔いなし」を思い起こさせる。過去には、稀勢の里は横綱になった記念の化粧まわしにラオウの刺繍を入れたこともある。孤高に闘うラオウの姿に自らを重ね、横綱としての責務を果たそうとしていたのかもしれない。

 稀勢の里は今後、荒磯親方として後進の指導にあたる。(今西憲之)